最近読んだ本681:『ゲーテはすべてを言った』、鈴木結生 著、朝日新聞出版、2025年
第172回(2024年)の芥川賞受賞作です。
「ゲーテはすべてを言った」という言い回しから出発して、登場人物たちが何かを調べたり、どこかへ行ったり、何かを仕でかしたりする小説でした。
青年時代の読書の途次、わたし自身「ゲーテはすべてを言った~」なる表現を目にした記憶があります。
当方はこれを、たぶんインテリたちには「ゲーテによれば……」「ゲーテいわく……」と発言し対談相手を煙(けむ)に巻こうとするせこい癖があって、そんな連中をからかうために創案された日本製揶揄(やゆ)なのだろう、と思い込んでいました。
『ゲーテはすべてを言った』を読み、どうやらこの言葉、実はドイツ製である、と知った次第です。
さて、タイトルで推察できるとおり、本書ではヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749~1832)にまつわる話題が目白押し。
知的な内容でした。
けれども、わたしがひもといたことがあるゲーテの作品は、
『ウイルヘルム・マイスターの修業時代』、ゲーテ 著、人文書院、1960年
『若きウェルテルの悩み』、ゲーテ 著、岩波文庫、1978年
わずか2冊に過ぎません(しかも『ウイルヘルム・マイスターの修業時代』は、かなりの飛ばし読み)。
そのせいで今回の『ゲーテはすべてを言った』の筋を追うことに難儀しました。
はじめ、
『文学部唯野教授』、筒井康隆 著、岩波書店、1990年
『文章教室』、金井美恵子 著、河出文庫、1999年
『輝く日の宮』、丸谷才一 著、講談社文庫、2006年
こうした諸作と同系統の読物みたいだな、と感じていたのです。
ところが、徐々に鈴木氏(2001年生まれ)の狙いがほのめいてきて、終盤で鮮明になった狙いはわたしが尊敬している学術書のアイデアがとっかかりになっていました。
ゲーテに関する小説を読んでいるときに、まさかあれが出てくるとは……。
驚きました。
本書には別の謎解きも用意されています。
しかし、解かれた謎は拍子抜けするようなものであり、まったくいただけませんでした。
この作品、江戸川乱歩賞だったら受賞できなかったでしょう。
金原俊輔