『ドナルド・トランプ:劇画化するアメリカと世界の悪夢』、佐藤伸行著、文春新書、2016年。

アメリカ合衆国は全世界に影響をおよぼす大国です。
そのため、2016年11月におこなわれる第45代大統領選挙は、世界中の興味の的になっています。

本書は、大統領候補のひとりである共和党ドナルド・トランプ氏(1946年生まれ)について書かれたものです。
トランプ氏のルーツから始まり、本人の少年期、青年時代、企業家としての活躍、に話が進んでゆきます。
エピソードがたっぷりで、わたしは氏に関してじゅうぶん学ぶことができました。

ただし、彼の政治活動や政策についての情報はほとんどなく、そこが物足りない点でした。

以上は著者・佐藤氏のお力不足ではありません。
トランプ氏が長くビジネス界に属しており、政界とは無縁だったせいです。

それに比べて、

『ヒラリー・クリントン:その政策・信条・人脈』、春原剛著、新潮新書、2016年。

こちらのほうでは、民主党ヒラリー・クリントン氏(1947年生まれ)の政治家人生が詳細に語られていました。

政治活動がとても豊富な人物です。

クリントン氏はファースト・レディ(大統領夫人)であったし、上院議員そして国務長官でもあったので、まあ当然といえるでしょう。

読みごたえがある本でした。

現在、トランプ氏もクリントン氏も共に人気が低く、盛りあがらない選挙の様相を呈しだしてきています。
当初はクリントン氏が優勢だったものの、いまとなっては両者互角のようです。

わたしたち日本人は、どうしても「トランプとヒラリー、どちらの大統領が日本にとって良いのか」と考えてしまいます。

そうではなく「どちらがアメリカにとって良いのか」ということを考えると、わたしは「政治経験が豊かなクリントン氏のほうかな」と思います。

ところで、わたしは『ドナルド・トランプ』に目を通して、トランプ氏が「ばい菌恐怖症」である事実を知りました。

「握手というのは恐ろしい習慣だ。〔中略〕そうやって黴菌が広がっていくのは医学の常識じゃないか。握手じゃなくてお辞儀で済ませる日本の習慣がうらやましい」
普通、トランプは日本については悪口ばかりだが、このときばかりは日本のお辞儀の習慣に羨望の念を禁じ得ないほど、黴菌が怖い。(pp.217)

わたし自身も同様の恐怖症を有していたので、彼に親近感をおぼえます。

わたしは恐怖症を森田療法で治しました。

もしトランプ氏が大統領に当選した場合、日本政府はお祝いとして(わが国が誇る)森田療法の書物を寄贈すれば、ご本人に喜んでいただけるのではないでしょうか。

金原俊輔