『こんな漫画家になりたくなかった:風俗体験取材28年間の苦悩』、コモエスタ神楽坂著、コア新書、2015年。

著者(1959年生まれ)は22歳のときにギャグ漫画家としてデビューされました。
作品が載ったのは少年誌だったそうです。

しかし、残念ながら人気は長つづきせず、子ども相手の仕事が減少してしまったため、フィールドを変更しなければならなくなりました。

紆余曲折の末、いまは大人用の雑誌に「性風俗体験」の作品を掲載なさっている由です。

漫画家のタマゴたちからも見下されている最低の漫画家の「くくり」がある。それが「風俗体験取材漫画家」だ。(pp.13)

神楽坂氏がこうしたお立場になられるまでの、これまで33年間の苦労、そして現在の葛藤、を綴ったものが本書です。

漫画の世界で生き抜くのが厳しいであろうことは容易に想像がつきます。
こうして当事者の体験談を読むと、厳しさがわたしなどの想像を超えて生半可ではない現実が、痛いほどにわかりました。

厳しい状況は著者ばかりに及んでいるわけではありません。

今現在(2015年)、週刊漫画誌は10誌、月刊誌、季刊誌、増刊など定期的に漫画掲載されている商業雑誌は250誌程度(だそうだ)。バイトもせず、漫画(イラスト・カット)だけを描いて生活している漫画家は大雑把に1万人。(中略)出版不況の現在では、1万人のうち4パーセント、400人程度がサラリーマン並、またはそれ以上の生活をしているそうだ。残りの9600人は、とりあえずバイトもせず漫画家と名乗り、1日中机に向かい漫画を描いているが、その暮らし「極貧」なり。(pp.13)

実につらそうな世界です。

ところで、上の引用文に「出版不況」という言葉が出てきました。

多くの漫画家が経済的に苦しんでおられるのは、ひとつにはこの出版不況が要因であるみたいですが、さらに別の要因も存在している模様です。

水木しげる氏の自伝の中では、貸本時代から週刊誌連載に移行する時に、貸本にこだわったり、こだわらざるを得なかった漫画家は98パーセント餓死している。と、書かれている。そう、紙から電子書籍に移行している、今の時代によく似ている。(pp.180)

非常に重要なご指摘と思います。

ここで問題視されている状況は「紙媒体を通していた情報が電子媒体にどのような形で移行してゆくのか?」でしょう。

世の流れはそれだけに止まりません。

いっそう根本的な問題として「これからわたしたちの生活や仕事に電子機器がどれくらい入り込んできて、現状を変えてしまうのか?」があります。

わたしたちは、このことについて予測し、備え、対応してゆかなければならないのです。

さしあたり、すべての企業は、どうやって時代の変化を先取りするか、(悪くても)乗り遅れないようにするか、しっかりと手を打たなければなりません。
それを怠れば、やがて業績不振が襲いかかってくるでしょう。

漫画家のかたが書いた本を読んでいて、わたしは(自社の将来のために)うっすら考えつづけてきたことに、改めて目を向けさせられました。

金原俊輔