『もっとヘンな論文』、サンキュータツオ著、角川書店、2017年。

風変わりな学術論文を集め、解説した本です。

笑える論文も含まれています。

わたしはサンキュー氏(1976年生まれ)のことをぜんぜん存じあげておらず、氏の前作である『ヘンな論文』、角川学芸出版(2015年)も読んでいません。

芸能界で活躍されているかただそうです。

わたしは、『もっとヘンな論文』は「トンデモ本シリーズ」と「イグ・ノーベル賞」の中間ぐらいを狙った試みかな、という予想でページを開きました。

おおむね予想どおりでした。

ただ、予想外だったのは、あつかわれていた諸論文がどれもしっかりしたものであったこと、それらを吟味する著者が高度な発想力・文章力をおもちだったこと、以上の2点でした。

うち、前者に関して「前世の記憶をもつ子ども」の章で紹介されている論文だけは、例外にさせてもらいます。

わたしは、「その子に前世の記憶があった」と決めつける前に、まず「空想が非常に豊かな子」「独特の言動を示す子」「偶然の一致が多かった事例」などの視点でくわしく調べてみる取り組みが必要だった、と感じました。

後者に関する例としては、サンキュー氏は、明治時代に夏目漱石がどのような交通手段をつかって愛媛県松山市へ到着したのかを検討した論文を語りつつ、

漱石は研究者が多いので、この旅行経路をだれか調べていないかなと山田先生が探したところ、やはり研究者の間でもさまざまな推理がなされてきたことがわかったようだ。つくづく漱石研究者は、もっとも安全なストーカーである。こんなことまですでに調べてあるんだから。(pp.211)

と、お書きになりました。

漱石研究者を「安全なストーカー」呼ばわりするのは、なかなか出てこない表現です。

いわれてみると実際そのとおりであり、わたしは著者の着想に敬服しました。

結論として、学問の世界の外側にも論文に目を光らせている存在があるということを知るために、本書は研究者たちが読んでおくべきものと思いました。

研究者は、世間一般から受ける評価より、学界からの評価のほうを気にしてしまいがちですので。

金原俊輔