最近読んだ本639:『世界のロシア人ジョーク集』、早坂隆 著、中公新書ラクレ、2024年

ロシアの政治家や軍人や庶民たち、ロシアの歴史、ロシア文化、などに関するジョークを集めた一冊です。

わたしはむかし、

ラビ・M・トケイヤー 著『ユダヤジョーク集』、実業之日本社(1983年)

をひもとき、とても楽しめたので、その後しばらくのあいだ、ジョーク関係の書籍あれこれを買い集めました。

いつしか興味が他領域へと移ってゆき、だんだんジョーク本とは疎遠になって、今回、数十年ぶりにそのジャンルの読物を手にした次第です。

早坂氏(1973年生まれ)の作品、おもしろかった……。

本当は、ここでひとつぐらいジョークを引用したいのですが、ジョークというのはいったん読んでしまうと以降は笑えなくなるので、営業妨害になりかねません。

引用は控えておきます。

代わりに、別のことを書きます。

まず、『世界のロシア人ジョーク集』の長所。

この本、要所要所にロシアの政治・社会・人物に関する分りやすい解説が付されており、解説に目を通せば現在のロシア情勢を把握できる点がセールス・ポイントと感じました。

具体例をあげましょう。

レニングラード大学の法学部を卒業したプーチンは、念願のKGBに入省。以降、諜報員として暗躍した。(中略)
今も歩く際、右腕の振り幅が左腕よりも小さい。これは「銃を素早く抜くための歩き方」。KGB時代に徹底的に叩き込まれたのだろう。(pp.119)

「プーチンには数名の影武者がいる(pp.94)」というあながち否定できない憶測があり、そこで、影武者など存在しないと顕示するため故意に「右腕の振り幅」に癖をつけている可能性も考えられないではないものの、いずれにせよ、わたしは彼の腕の振り幅に特徴があると知らなかったので、新知識になりました。

つづいて、当方が感じたことの二つめです。

本書における独裁者ジョークおよび専制国家ジョークを読んでいると、とくにロシアが主人公ではなくても、中国であっても北朝鮮であっても、違和感なく通用するような笑い話ばかりでした。

共産圏の国々が似ているという事実、そしてそれらの国々がよりによって日本のお隣さんばかりであるという事実に、改めて気づかされました。

最後に、早坂氏は、

罵詈雑言や中傷、差別などではなく、あくまでもユーモアを通じての風刺を大切にしたい。ネット上には小学生の落書きのような書き込みも目立つが、適度な笑いを交えて批判なり批評するのが、あるべき大人の態度と言えよう。(pp.6)

こうお書きになっています。

小学生たちに対して失礼な例えではないかと思いましたが、大意には賛成で、われわれ誰しもが「大人の態度」を血肉化し保たなければなりません。

金原俊輔