『遺伝か、能力か、環境か、努力か、運なのか:人生は何で決まるのか』、橘木俊詔著、平凡社新書、2017年。

少々網を広げすぎているというか、欲張りというか、いずれにしても遠大なタイトルです。

書店で立ち読みしたところ、臨床心理学に携わる者として関心を引かれる章が含まれており、購入しました。

興味ぶかい内容でした。

しかし、あつかわれるテーマが多彩だったため、本書の中身をまとめるのは容易ではありません。

まとめることにそれほどの意味はないようにも思われます。

読者それぞれが自分の参考になる箇所を選んで読めば良いタイプの本でした。

そこで以下、わたしがおもしろく感じた部分をいくつか引用します。

まず、こういう話において、邦書ではよく身長の件が例としてあげられます(英語の本だと、身長のみではなく髪の色や目の色が語られる場合があります)。

『遺伝か、能力か~』でも身長について解説がなされました。

それによれば身長の遺伝率は66パーセント。

これは背の高さの「ばらつき」のうち66パーセントが遺伝で決まるのであり、残り34パーセントが環境なり育て方で決まるということを意味している。背の高い(低い)親の子どもに背の高い(低い)子どもの生まれる確率は66パーセントである、ということを意味しているのではない。この66パーセントという数字を遺伝による効果が大きいとみなせるのか、それとも小さいのか、これに関しては解釈は微妙である。(pp.82)

わたしの予想を下回る小さい数字です。

つづいて、日本の子どもたちは、

宿題はきちんとやるという回答に関して、家庭の教育的環境による差はほとんどなく、しかもその割合が94パーセントの高さにも達している。(中略)
教育政策の観点から評価すると、先生方はできるだけ多くの宿題を生徒に課すことによって、一段と高い学習効果を期待できそうな気がする。生徒は宿題を義務とみなしているので、この思いに期待すれば、生徒の学力は高くなりそうである。(pp.153)

94パーセント?

今度の数字はわたしの予想を大きく上回りました。

後半のご提言には納得させられます(子どもたちは迷惑に受けとめるとしても)。

さらに、チェス選手や囲碁棋士の知能指数(IQ)をめぐる話題。

多くの研究成果をサーベイ(概観)したエリクソンとプール(2016)によると、チェスプレーヤーや囲碁棋士のIQと、競技の強さには相関がない、という結論だったのだ。例えば、チェスプレーヤーのIQスコアは平均以上ではあったが、技量とは明確な相関はなかったし、囲碁棋士の場合には、トップ棋士のIQの平均値が93しかなく、一般の人の100よりも低いという結果であった。(pp.183)

平均値93というのは、いくらなんでも低すぎるように思います。

測定のまちがいではないでしょうか。

もっとも、そう示唆する研究報告があるわけですので、暫定的に認めざるを得ません……。

以上のような各種トピックを手際よく紹介した本でした。

書中における個々の情報の重要性もさることながら、わたしの印象にとどまったのは、著者(1943年生まれ)が有されるご自身が知りたい事柄は徹底して調べあげ知ろうとする意欲・知的探究心です。

羨(うらや)みました。

金原俊輔