『本を遊ぶ:働くほど負ける時代の読書術』、小飼弾著、朝日文庫、2018年。

非常に本好きな小飼氏(1969年生まれ)がお書きになった読書指南です。

念頭にある対象者はおもに若い人たち。

読書をすべき、多彩な本を読むべき、ベストセラーばかり読むのはよろしくない、読書には効能がある、こうしたアドバイスが分りやすく語られていました。

どのアドバイスにたいしても、わたしは双手をあげて賛成します。

まず、読書はすべきものであり、

よく「本を読んでいる時間なんてない」という人がいますが、こういう人に限って、たいてい毎日3時間以上テレビを見ています。(中略)テレビはもちろん、インターネットで意味のない情報を延々と読み続けたり、SNSで「つながったり」する時間を読書にあてれば、確実に2、3時間は捻出できます。(pp.20)

おっしゃる通りです。

時間のあるなしだけではなくて、

もしも今、話し相手がいなくて孤独な思いをしている人がいたとしたら、SNSなどで安易に孤独を紛らわせるよりも、本を読んだほうがどれくらいいいかわかりません。(pp.48)

話し相手のあるなしも、せっかくですから読書につなげるべきなのです。

また、話題の本のみに接することは、あまり読まないのと変わらず、

もし僕が誰かの部屋に招かれ、その人の本棚にベストセラーばかりが並んでいるのを見たら、「この人は普段、本を読んでいないんだろうな」と判断します。(pp.125)

この程度でしかありません。

しかも、たんに読めばよいというわけではなく、異なる分野の書物をひもとく必要があり、

同じジャンルの本ばかり読むのはもったいないですし、それに1つのジャンル、1人の著者ばかり読み続けるのはかえって有害ですらあります。
本棚全部が自己啓発本で埋まっているような人は、本棚の中身を丸ごと古本屋に売り払って、思い切って1年間読書をやめるぐらいの荒療治をしてもいいかもしれません。(pp.23)

いちいちもっともなご意見です。

そして、多数・多彩な読書の結果、確固たる自分、堅牢な人生観、をもてるようになるでしょう。

若い日に読んだ本の影響で、人格すら形成されてしまうことも珍しくありません。(pp.176)

人に「ひねくれている」といわれるくらいでないと社会で認められません。僕という人間も、偏見を買われています。(pp.176)

おまけに読書には現世的ご利益まであって、

一説によれば、高額所得者のほうがたくさん本を読んでいるといいます。一方、生活の貧しい人たちはまったく本を読まないで、スマホばかりいじっている。(pp.174)

どうしてかというと、

本を読めばそれだけ多くの着想を得られるからです。多くの着想を得られれば、それだけ稼ぐチャンスも増えます。(pp.174)

これに関連し、別のページでは、読書のおかげで「うまくいかないことがあったりしても、ひねり出せる代案がおのずと増える(pp.178)」メリットも述べられていました。

以上のほか、『本を遊ぶ』には、わたしがまったく考えていなかった指摘が種々含まれています。

一例は、

人として最低限文化的な教養があるかどうかの目安は、自国語で書かれた本を読むのが苦痛でないかどうかではないでしょうか。(pp.45)

「なるほど」と納得させられました。

若者たちにかぎらず、すべての読書嫌いなかたがたに、本書を読んでほしいと願います。

最後になりますが、

もし僕がベストセラー本ばかり読み、年間たかだか1000冊しか読んでいないとなれば、こういう本は書けませんし、人と同じような発想になっていたでしょう。(pp.176)

わたしは、自分では「わりと本を読むほうだ」と思っていたものの、年間1000冊以上というのは60数年間の人生で達成したことがありません。

最多の時期でも、せいぜい年に500冊ぐらいでした。

IT業界で活躍され、(70ページに書かれていた文章によれば)電子書籍にも抵抗がない著者が、これほど熱く紙の本の読書をなさっている事実に、畏敬の念をいだきます。

金原俊輔