『エマニュエル・マクロン:フランス大統領に上り詰めた完璧な青年』、アンヌ・フルダ著、プレジデント社、2018年。

これは、第25代フランス大統領であるエマニュエル・マクロン氏(1977年生まれ)の、幼少時から大統領候補になるまでの半生を眺望し、論評を加えた作品です。

いまや世界中の人々が基本知識をもっている、24歳年上である奥様のブリジット・マクロン氏との出会い。

また、わたしには初耳だったのですが、大統領が実のご両親とのご関係よりも母方の祖母(故人)との関係のほうを大事にされていた件。

こうした話がくわしく書き込まれていました。

わずかですが、マクロン氏が大統領に就任されてからの動きも「追記」として語られています。

調べがゆき届いた内容でした。

本書への評価は「読者がそもそも何を知りたくて読みだしたのか」に左右されるでしょう。

わたしの場合、マクロン氏のプライベート・家庭がらみの話題よりも、大統領選立候補時の主張や言動、たとえば「EU離脱」派の国民をどのように説得したのか、難民政策はどうする予定だったのか、テロにたいしてはいかなる手を打つつもりなのか、アメリカや中国とのつき合いではどんな方向性をめざしているのか、こうした情報の入手を期待していました。

「国民戦線」党首マリーヌ・ルペン氏との一騎打ちだった決戦投票についても、もっと知りたかったです。

そのような意味では、わたしには「読みごたえ」が乏しい一冊でした。

著者のフルダ氏(1963年生まれ)は、有名な新聞『ル・フィガロ』紙の政治記者だそうですから、本来、わたしが望んでいた分野のご執筆がお得意なはずなのですが。

マクロン氏という人物は、

自分が求めるまなざしを往々にして自分よりも年上の人たちに見出した。(中略)そして相手もエマニュエルを認め、彼の教養、知性、分別、物事を総合的に考える力などを高く評価した。(pp.144)

さりげなく人に気に入られることができる。どんなときにも多大な親切心を発揮し、いつも相手の話に熱心に耳を傾け(そう簡単にできることではない)、類いまれなテクニックを披露しながら。(pp.163)

要するに「年長者キラー」であり「聞き上手」でもあるわけです。

この種の情報は、いつか氏と相まみえることになる各国の政治家たちにとって有益でしょう。

以上のとおり、『エマニュエル・マクロン』は、まったく役に立たない書物などではありませんでした。

わたしが絶賛しなかったのは、あくまで個人的な好みの結果にすぎません。

最後の話題となります。

マクロン氏のお名前を初めて聞いた際に、フランス菓子「マカロン」を連想した人は多かったはず。

しかし、あまりにベタなので、だれもがギャグとして口にできなかったのではないか、と想像します。

ところが、著者によると、氏の奥様は、

三人の子があり、マカロンで有名な老舗の菓子店を営むトロニュー家の出である(後略)。(pp.77)

なのだそうです。

マクロン氏はマカロンの関係者でいらっしゃった……。

金原俊輔