『発達障害と少年犯罪』、田淵俊彦、NNNドキュメント取材班共著、新潮新書、2018年。

もともとは「日本テレビ」のドキュメンタリー番組だったそうです。

2016年5月に放送され、視聴者たちからの反響がおびただしかったため、このほど書物として出版されました。

「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれる発達障害が種々の少年犯罪とどう結びついているのかを、丹念に取材し明らかにした内容。

重く切羽つまった問題に焦点を合わせたと考えます。

少年犯罪にそれほど興味をもっていなくても、精神科医、教師、ソーシャル・ワーカー、スクール・カウンセラー、といった人々は、ぜひ読んでおくべき本でしょう。

わたし自身は行動療法と認知行動療法を専門におこなうスクール・カウンセラーです。

上掲書には、わたしの専門領域を批判する文章もありました。

「『認知行動療法』の限界」という項において、

認知行動療法は、「認知能力がある」ことが前提になる。だからその「認知の歪み」を修正してゆこうとするのだ。しかし、もともと認知能力が著しく劣っていたり、「ない」に等しい子どもはどうすればいいのか。(pp.146)

以上の問いかけがなされていたのです。

まさに正鵠を射た問いかけであり、認知行動療法はご指摘のとおりの弱点を有しています。

この本のすごさは、たんに問うただけではなく、対応策として、立命館大学教授で医師の宮口幸治氏が考案された「コグトレ」なるものを見つけだし紹介しているところです。

コグトレは、「認知○○トレーニング(Cognitive ○○ Training)」の略称で、目的別に3つのトレーニングから構成されている。

1 社会面を強化する……認知ソーシャルトレーニング(Cognitive Social Training: COGST)

2 学習面を強化する……認知機能強化トレーニング(Cognitive Enhancement Training: COGET)

3 身体面を強化する……認知作業トレーニング(Cognitive Occupational Training: COGOT)

以上のコグトレは、文字通り、認知機能を改善するトレーニングであるが、少年院などで広く導入されていて対人関係など社会性を養う目的のソーシャルスキルトレーニング(Social Skills Training: SST)よりも更に本質的で、自分の身体の認識、集中力の醸成、他者への意識に焦点を当てている(後略)。(pp.151)

すばらしい取り組みです。

開発なさった宮口氏はもちろんご立派ですし、これを導入した各地の少年院も英断をくだしたと思いました。

おそらく発達障害の当事者に役立つ技法となっているのではないでしょうか。

コグトレの存在を知っただけでも、わたしには『発達障害と少年犯罪』をひもといた甲斐がありました。

そのほか、多数の事例を踏まえたのち、国や行政にたいする提言もなされています。

金原俊輔