『読書の極意と掟』、筒井康隆著、講談社文庫、2018年。

著者(1934年生まれ)が、子ども時代からおおむね1990年代までのあいだに読まれた本のうち、影響が強かった作品を列挙し、感想を述べられたものです。

ご自身で「筒井康隆のつくり方とでも名づけるべき(pp.220)」とお書きになったほど、強い影響をお受けになりました。

小説、戯曲、マンガ、評論、心理学、哲学。

幅広い領域の書物66冊が収録されています。

この『読書の極意と掟』は、本を紹介しながら著者の来し方も振り返るという趣向で、読書好きかつ「筒井ファン」であるわたしには興趣が尽きない内容でした。

書中あちこちに筒井氏の着眼・着想が記されており、たとえば『モンテ・クリスト伯』を回顧しつつ、

ぼくはまず、児童向きの本で読まなくてほんとうによかったと思った。「神は細部に宿る」なんて諺(ことわざ)はまだ知らなかったが、その諺はまさに小説のためにあったのだ。子供向きの本ではストーリイを追うあまり細部の描写や瑣末(さまつ)なエピソードは省かれてしまう。しかし小説の真の面白さはそういう部分にこそあり、(後略)。(pp.34)

うなずきます。

わたしの場合、『読書の極意~』にてあつかわれた小説の、

呉承恩(?)著『西遊記』

アレクサンドル・デュマ著『モンテ・クリスト伯』

プロスペル・メリメ著『マテオ・ファルコーネ』

などは、「児童向き」でしか読んでいません。

反省しました。

本書は、大家・筒井氏の存在をわたしに再認識させてくれた一冊ながら、以下、ひとつだけ勝手な言いがかりをつけさせていただきます。

同氏が書かれたほかの小説やエッセイでも感じていたのですが、氏は心理学の専門書を多読されているにもかかわらず「つまみ食い的な読書」に終始している印象があり、そのせいか、心理学の精髄を理解していらっしゃるとは思えませんでした……。

賞賛に戻ります。

筒井氏がすごいお力をもった作家であられることは衆目の一致するところです。

本書をとおして、そのお力が、読書量の豊富さおよび読み込みの深さに由来している事実が明らかになりました。

お忙しいでしょうに、ご立派です。

尊敬いたします。

最後の「解説」において、解説者・今野敏氏は、

知性は読書でしか磨かれないのだ。映画も絵画鑑賞も美食も重要に違いない。しかし、それは読書を補完するものでしかないような気がする。
人間の成長には実体験が何より重要だという人がいる。それは認める。(中略)
経験を言語化して理解し自分のものにするためにも読書はおおいに役に立つのだ。(pp.224)

と、論じられました。

わたしもご意見に同意します。

金原俊輔