『お金の流れで読む日本と世界の未来:世界的投資家は予見する』、ジム・ロジャーズ著、PHP新書、2019年。

投資家の視点を通しながら日本そして世界の今後を予想した書物です。

わたしは投資と無縁なため、この本を読むまでロジャーズ氏(1942年生まれ)が有名だという事実を存じておりませんでした。

北朝鮮観、インド観、台湾の将来、日本における移民の受け入れ問題、農業、AI、カジノ、そのほか多彩な事項を展望なさっています。

ただ、全体的に「お金がらみ」の論考。

日本がひとたび移民受け入れを表明すれば、多くの人が日本に移住し、農地を買ってそこで働くだろう。(中略)
移民なら、農業でも働いてくれる。低賃金で働いてくれる外国人を日本に入れない限り、農業は大きな成長産業にはならないだろう。(pp.66)

こうした発想が話の中核です。

わたしは「お金を真ん中に置いて検討する」やりかたを非常に大事と認める反面、『お金の流れで~』のページを繰りつつ少々倦(う)んでしまいました。

「金勘定を介在させずに考察すべき話題が多分に含まれている」とも感じました。

著者とわたしは相性が悪いみたいです。

もちろん、書中、読者の役に立つであろう箇所はありましたし、個人的に同意する箇所もありました。

転載すれば、

日本には、品質を犠牲にして生産性を高めた方がいいと主張する人もいるという。確かに日本は、労働力人口が減少しているし国の借金も増えつつある。品質を維持する体力が落ちてきているのだ。かつてアメリカメーカーを駆逐したテレビ産業は、いまやサムスンやハイアールに完敗してしまった。さらにAI開発でもアメリカ、中国に後れを取っている。実に嘆かわしいことだ。だが、世界一の品質を自ら捨てるような愚策は、絶対に取るべきではない。(pp.75)

緊要なご助言と考えます。

つぎに、著者は熱心に勉強されるかたみたいです。

情報収集を図るために、インターネットやメールばかりではなく、

新聞も購読している。かつては複数のアメリカ紙を読むのに加え、英国やカナダ、日本など五カ国の新聞を読んでいたが、いまは二~三カ国に絞っている。日経新聞も昔は購読していた。(pp.188)

こうやって努力をつづけておられる模様。

絶え間なく努力することの大切さを再確認しました。

いっぽう、

アメリカを離れてシンガポールに移住したのは、二人の娘たちを英語と中国語のバイリンガルにさせるためだった。現在世界の共通語は英語だが、将来は中国語が世界を牛耳る言語になるとその時から確信していたのだ。移住して10年以上経ち、いまや娘たちは現地の人々と変わらないくらい中国語を流暢(りゅうちょう)に操る。(pp.209)

なにをなさろうと結構ですけれども、父親の信念につき合わされたお嬢さまたちが可愛そうです。

以上、慣れないタイプの読書となり、とはいえ斯界の権威の処世訓に接するひとときを得た、貴重な体験でした。

読了したのち、わたしにはふたつの疑問がのこっています。

まず、ひとつめは、著者が日本を語る際に「TPP11」にまったく言及なさっていなかったこと。

TPP11の発効はわが国の経済を検討するうえで無視してはならない動きだと思うのですが。

もうひとつ、ロジャーズ氏は幾度も韓国と北朝鮮が統一されるという前提に基づき発言されています。

可能性が皆無とまではいわないものの、いまのところ、その成り行きを当然視するのは尚早なのではないでしょうか。

金原俊輔