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『EU離脱:イギリスとヨーロッパの地殻変動』、鶴岡路人著、ちくま新書、2020年。

イギリスは2020年1月末にEU(欧州連合)から離脱しました。

一般に、この離脱は「ブレグジット」と呼ばれています。

本書は、

(1)ブレグジットが決定されるまでのイギリスの事情はどうだったか

(2)ブレグジットをめぐるEU側の反応はどうだったか

(3)ブレグジット後のイギリスはどうなるか

(4)ブレグジット後のEUはどうなるか

等々を解説したものです。

離脱を取り巻いていた状況は極度に複雑だったのですが、鶴岡氏(1975年生まれ)は可能なかぎり分りやすく整理してくださいました。

おかげさまでブレグジットの全体像を把握できたように思います。

さて、わたしはブレグジットに反対でした。

いわば「残留派」だったのです。

反対していた最も大きな理由は「ブレグジットに伴ってギリシャ・スペイン・フランスなどの国々も離脱しだすのではないか、その結果、EUの経済が低迷するのではないか」というものでした。

しかし、著者によれば、

イギリスに続いてEU離脱を希望する加盟国が続出するという「離脱ドミノ」の懸念は杞憂に終わった。イギリスにおける欧州懐疑主義と、他国におけるそれとの間に質的な違いがあったことがまず指摘できる。加えて、離脱決定を受けてのイギリス政治・社会の混乱を見せつけられ、離脱の魅力が大きく減退したことも大きかったと思われる。(pp.42)

わたしの心配は当たらなかった模様です。

もうひとつ懸念を抱いていた件があって、それはこうです。

EUは長らく英独仏の3カ国が牽引してきたが、イギリスが離脱したら独仏だけとなり、均衡が崩れてしまう。

しかも、フランスは単独でドイツと渡り合えるほどの経済力を有していないため、結局ドイツの独り舞台になる。

これはEUにとって好ましくない流れであるばかりか、ドイツにとっても負担になるのではないか……。

当該懸念に関しては著者も憂慮されており、たしかな情報に基づいて状況を紹介なさいました。

デンマークのある国会議員は、「我々の最重要のパートナーはイギリスだった。今後は仏独のなかに一人取り残されてしまう。それは誰にとってもひどい状況だ」と述べている。ここまで直截的な表現をしなくとも、「ブリュッセルや独仏にモノをいう兄貴分」としてのイギリスを懐かしむような感情が、欧州の一部で共有されていることは否定できない。(pp.215)

ベルギーのブリュッセルは、EUの本部所在地です。

財政規律の維持や、自由貿易の堅持といった原則部分に関する限り、ドイツはその有力な擁護者である。この点に疑問はないが、EMU改革を含めた独仏協力がトップダウンの政治主導によって進展する場合に、ドイツがフランスに引きずられてしまうことへの疑念がある。先述の財務相共同声明が懸念するのもまさにこの点であった。(pp.217)

「EMU」とはEUの通貨ユーロをあつかう「経済通貨同盟」の由。

以上、『EU離脱』は、ヨーロッパの現状を知るうえで参考になる書籍でした。

今後もブレグジットに起因する大小さまざまな問題が生じるであろうことは誰だって予測しているわけですが、ヨーロッパ諸国の文化・経済は相当に厚みがありますので、わたしは何が起こってもヨーロッパはやがて乗り越えるだろうと、けっこう楽観視しています。

雑談へ進みます。

ブレグジットでは「北アイルランド国境問題」が容易ならざる障壁になりました。

わたしは(カトリックやラグビーといった自分自身との共通項があるため)アイルランド共和国びいきです。

ブレグジット騒動のドサクサに紛れて、北アイルランドとアイルランド共和国の統一さらには「新」アイルランドのイギリスからの独立が成されれば良いのに……、こんな勝手で無責任きわまる夢想をしました。

金原俊輔

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