『すべての戦争は自衛から始まる』、森達也著、講談社文庫、2019年。

わたしはかならずしも森氏(1956年生まれ)と政治的・思想的な方向性を同じくしていません。

とはいえ、他作家による多くの書物と同様、このかたの著作にも参考とすべき部分が多々含まれており、わたしはそれを求めて、ある程度の冊数を読んできました。

今回は上掲書でした。

やはり心の琴線にふれる一節を書内あちこちに有しています。

まずは、

自国を愛するがゆえに批判もしたい。(pp.36)

諸手を挙げて賛成したいお考えです。

こうした自由が認められる状況こそ、人々がいっそう国を愛する要因となるでしょう。

つぎに、

アメリカほど自己中心的で傲慢な国はない。しかも腕力は世界一だ。だから力に任せて物事を解決しようとする。独善的な正義に酔いやすい。とにかく欠点だらけの国だ。(pp.186)

わたしは、(1)現下の世界はアメリカ並みの自己中心的で傲慢な国家だらけになっていると思われること、(2)アメリカは欠点と良い点とが同じぐらいの割合で混在している国と思うこと、2点を掲げて著者に反対します。

が、上記以外の文章には同意し、とりわけ「独善的な正義」は、わたし自身、約10年間の米国生活で見聞しました。

最後の引用。

著者は最近の書店で日本人が執筆した母国礼賛本が目立ちだしている趨勢を嘆きながら、

いつからこんな雰囲気になったのだろう。(中略)
こうした書籍の多くは日本の文化や伝統などを賞賛することが常だけど、そんな自画自賛は、まったく日本人らしくないと気づかないのだろうか。(pp.273)

膝を打ちたくなります。

わたしも類似の指摘をこのコラムでおこないました。

以上が、わたしが共感した箇所の抜粋です。

読みながら世界と日本にじっくり思いを馳せるようなる本でしたし、著者が自著の説得力や完成度を高めるために北朝鮮・ヨルダン・カンボジアといった紛争地に赴かれたことに敬意を表します。

ただ、森氏は、ご自身の作品を読みやすくするためでしょうか、ところどころで「緑川南京」なる筆名を用い、くだけた話の進めかたをなさっています。

わたしはむしろ煩(わずら)わしく感じました。

金原俊輔