『激変する世界を先読みする:沸き起こるファシズム』、佐藤優、副島隆彦共著、日本文芸社、2019年。

論客おふたりが現在の世界情勢を分析し、そして将来を観望した啓発書です。

すごい内容でした。

わたしは、以前から佐藤氏(1960年生まれ)の著作はよく入手しており、氏の鋭さと驚異的な博識ぶりに畏敬の念を抱いています。

共著者のほうは今回が初めて。

ただ、むかし、小室直樹(1932~2010)追悼集に収録されていたかなりヒステリカルな論調の短文を読み、それに接して以来、副島氏(1953年生まれ)を敬遠していました。

このたびの読書で氏の豊かな学殖に触れることができ、自分の「食わず嫌い」的な面を反省いたしました。

とにかく、両者どちらもが凄まじい量の情報を所持しておられます。

副島  エマニュエル・マクロン大統領は、ゴーンを嫌っていた。昨年の4月、ルノーと日産の会長をマクロン大統領は辞めさせようと思っていた。ところが、「私のクビを切れるなら切ってみろ。できないだろ」とゴーンが啖呵(たんか)を切って居直った。マクロンは怒っていましたね。そこをよくわかっていて、日本の検察官僚(法務省)と税務官僚のトップのところが、「じゃあ、こいつは、しばいていいな」と決断した。(後略)(pp.20)

驚きの内幕でした。

副島  ということは、もう、はっきりと、日本は国後、択捉は落としたのですか。
佐藤  はっきりと落としています。(pp.46)

外務省時代「在ソ連・在ロシア日本国大使館」に勤務された佐藤氏がおっしゃるからには、事実なのでしょう。

佐藤  順当にいけば、次の自民党総裁選がある2021年9月ですね。
副島  総裁選まで。ひぇーっ。私は安倍晋三が大嫌いだ。彼が統一教会(ムーニー)だから嫌いです。おじいさんの岸信介の時からそうだ。(pp.116)

初耳です。

佐藤  だってトランプは日露戦争を知らなかったといいますから。
副島  当たり前ですよ。トランプはそんなもの知らないですよ。(pp.101)

これはあまり驚きではない……。

佐藤  そういうところから考えると、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』が世界的にベストセラーになるというのは、何か一種の人種主義の復興です。
副島  さすが佐藤さん、鋭いですね。においで感じ取るのですね。(pp.241)

わたしは、

ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』、河出書房新社(2018年)

を読了し、書評まで書いたのですが、「人種主義の復興」の「におい」をきちんと感じ取ることができていませんでした。

読解力のちがいを痛感します。

『激変する世界~』において書かれたひとつひとつが関心をそそられる話題だったものの、それ以上に、佐藤氏・副島氏が大変な勉強家であり博覧強記でいらっしゃる事実が滲みでてくる対談だったことに深い感銘を受けました。

わたしを含めた一般人は太刀打ちできない広範囲な教養のもちぬしたちです。

副島氏がときおり「もしかしたら妄想なのでは?」と想像してしまうご発言をなさっているのが、すこし気になりました。

金原俊輔