最近読んだ本257

『韓国のトリセツ:やたら面倒な隣人と上手に別れる方法』、西村幸祐著、ワニブックスPLUS新書、2019年。

2019年6月現在、日本と韓国の外交関係は「最悪」と表現するしかない様相を呈しています。

韓国が日本にたいし「竹島占拠」「慰安婦像の設置」「慰安婦合意の破棄」「徴用工裁判」……さまざまな政治的キャンペーンを仕掛けてきたのが原因。

韓国人のほうは前述の諸事項が原因とは見なしていないでしょうが、日本側にしてみれば原因となります。

わたし自身が韓国をどう思っているかというと、やはり、ひとりの日本人として韓国の言動・行為に怒りを感じており、とりわけ同国駆逐艦による日本海上自衛隊機への「攻撃レーダー照射事件」は腸(はらわた)が煮え繰り返る思いでした。

かといって、緊張がここまでに至ってしまうような日本と韓国のあいだがら、わたしは背景となる歴史を熟知しているわけではありません。

種々の文献に目をとおし、過去および現在をできるだけ正確に把握したうえで韓国を眺めるしかない、と考えています。

そして少なからぬ量の関係書を読んできました。

すでに本コラムの書評であつかった中では、

西崎雅夫編『証言集 関東大震災の直後 朝鮮人と日本人』、ちくま文庫(2018年)

が、最も訴える力が強い一冊でした。

日本人著者が「一視同仁」的な姿勢で記述した韓国がらみのノンフィクションとしては、

本多利範著『おにぎりの本多さん』、プレジデント社(2016年)

があります。

良書でした。

それでは『韓国のトリセツ』はどうだったか?

NHKは「冬のソナタ」に関する、常識を超えた宣伝を全放送時間帯を用いて行なっていた。ニュース番組であるはずの「クローズアップ現代」までが番組内容を宣伝的に放送していたのだ。それと同時に、民放各局がNHKのテレビドラマを自社の番宣のようにPRしていた。当時の状況を振り返れば、ブームを起爆させる意図的な情報統制があったと考えるのが普通である。(pp.41)

こうした裏情報が多く書かれており、かの国への敵意を日本人読者に生じさせることを目論んでいるのだろうと思われる内容でした。

たとえ実際に韓国が日本メディアを操作し「自然発生的(pp.40)」でないブームを作ろうとしたにしても、そして、それはたしかに日本人にとって不本意なことであるものの、日本メディアだって多数の作家・読物を使って国民の「反韓感情」をあおってきているのです。

まあ、どっちもどっちというか……。

イチローは世界的に有名な日本人であることで、バッシングの対象となる。「ボールからニンニクの臭いがする」と発言したという韓国紙の捏造報道などでハラスメントにさらされた過去もある。当時、「イチロー暗殺Tシャツ」という物騒なものも登場した。(pp.131)

上記にしたところで、きっかけは「捏造報道」であり、捏造報道のことを英語でいえば「フェイク・ニュース」。

いまや全世界に蔓延する困った現象です。

日本とて例外ではありません。

韓国だけを責めるのは不公平でしょう。

捏造報道で連想しましたが、さきの『おにぎりの本多さん』書によれば、2014年、サッカーのワールドカップ・ブラジル大会で、

日本対コートジボワール戦が開催された6月14日、現地観戦した日本人のサポーターが、試合後に会場のゴミ拾いをする写真がツイッターに投稿された時のことだ。
この投稿に対し、「日本は最高!」「彼らの文化と教育にブラボー」「尊敬すべき行動だ。わたしたちも学ばないといけない」などと、世界各地の人々がさまざまな言語で反応した。(中略)
その時に思い出したのが2002年のソウルの街の様子だった。
光化門のパブリックビューイングに集まった「赤い悪魔」たちは、試合が終わった後、なんと会場となった市庁広場、太平路、世宗路のゴミを拾って帰って行ったのである。(中略)
その伝統が2014年のブラジルワールドカップの際も残っていることを、わたしはネットニュースで知った。日本では紹介されていないが、中国のネットで、光化門や江南の永東大路のパブリックビューイングに集まったサポーターたちが試合終了後、ゴミを拾い各自持ち帰った姿を報じていた。(pp.204)

わたしは韓国人のこういう高い民度について知識がありませんでした。

知らなかったのは、もしかしたら日本のメディアが「報道しない自由」を行使したせいなのかもしれません……。

このように、わたしは『韓国の~』を読みながら、他書に接したときと同じく、あれこれ考えさせられました。

日韓関係の勉強はまだ「道半ば」ですが(しかも「日台関係」「日中関係」「日米関係」「台中関係」の本もよく読んでいるため、これでなかなか忙しい身なのですが)、できるだけ冷静かつ偏りがない書物を選ばなければならない、と気をつけているところです。

金原俊輔

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