最近読んだ本4
『ハーヴァード・ロー・スクール:わが試練の1年』、スコット・タロー著、ハヤカワ文庫、1994年。
名門法科大学院に入学した主人公の、最初の1年間の学校生活を記述したノンフィクションです。
わたし自身、アメリカの大学院で学んだ経験があるので、身につまされる、自分の実体験に近い内容でした。
たとえば、法科大学院入学式の日、主人公が他の入学生たちの経歴を調べてみたところ、医師資格だの博士号だのをもった人たちばかりで「これからこんな優秀な連中を相手にしてゆくのか」とため息をつくシーンがあるのですが、わたしも博士課程の同級生たちの学歴・経歴を知ってげっそりしたことを思いだします。
しかし、本書で紹介されているハーバード大学法科大学院の過酷な実態は、わたしの体験をはるかに上回るものでした。
学問に対する真剣勝負のエピソードが本のあちこちにちりばめられています。
緊張に満ちた授業が進められ、宿題は山盛りです。
だれもが勉学に没頭して、学年全体が疲労感とイライラ感におおわれます。
学生たちはユーモアをいう気力すら弱まりだします。
主人公も異常なまでの猛勉強をし、クラスメートたちと競い合います。
やがて、ある日をもって第1年次が終了します。
その日をむかえてホッとした感じの最後の1行がとても印象的でした。
アメリカは「自由の国」「人それぞれがマイペースに生きることができる国」と思われがちで、たしかにそのような面もありはします。
いっぽう、学校や職場や軍隊における新人教育・初年次教育は、かなりきびしいです。
アメリカという国のそうした一面を知る上でも、この本は参考になると思いました。
金原俊輔