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『プーチンの実像:孤高の「皇帝」の知られざる真実』、朝日新聞国際報道部著、朝日文庫、2019年。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(1953年生まれ)の政治信念・政治的活動について詳述したノンフィクションです。
文庫本ながらも分厚く、プーチン氏および国際情勢に関する情報量が豊富な一冊でした。
大略つぎのような流れです。
出世欲は見せなかったというプーチンだが、周囲の人たち、特に年長者を魅了する不思議な力を持っていた。(pp.83)
プーチンは恐れるに足りない男だった。だからこそ、安心して大統領の座に据えられた、ということだ。(pp.167)
「彼が入ってきたとき、広い部屋がたちまちプーチンで満たされたようだった」(pp.276)
プーチンは2012年に4年ぶりに大統領に復帰して「まったく変わってしまった」のだという。(pp.277)
ロシアと話をつけようとするとき、彼を相手にするしかない。なぜなら、すべてを彼一人が決めてしまっているからだ。(pp.273)
プーチンが今のような独占的な権力基盤を維持できれば、次の指導者もプーチンの手によって決められることになるだろう。(pp.258)
こうした変化にともないつつ、同氏が諸外国へどう働きかけてきたか、周辺諸国に何をしてきたか、が書き連ねられています。
さて『プーチンの実像』を読みだした当初、わたしはなかなか主人公の全体像をつかめないでいました。
おおむね分ったのは、彼は煮ても焼いても食えない策士である、ということ。
まあ、お顔立ち・表情を見れば、これは意外な感想ではありません。
さらに、プーチン大統領は、(1)グローバリズムに積極的ではない、(2)外交よりも内政を重視している、左記の印象も受けました。
最後の第4部「大統領復帰後のプーチンと日本」にたどりつき、ようやく彼の人となりがしっかり浮かび上がってきた感じです。
なぜそうなったかというと、やはり自分の理解の助けになる手がかり「日本」が登場したからでしょう。
この第4部では「北方領土返還」が主たる話題でした。
北方領土。
いうまでもなく日本とロシアのあいだで虚々実々のかけひきが交錯している懸案事項です。
上掲書を読む前も、読了後も、わたしは「4島すべての返還はあり得ない、2島返還すらたぶん無理、結局なにも起こらない」という身も蓋(ふた)もない予想をしています。
今後、当該予想が完全に外れる成り行きを祈っています。
全日本人の悲願ですので。
ただし、
プーチンと向き合わねばならない外国首脳らの苦悩は深い。(pp.273)
プーチンは、日本を大事に思っているというシグナルを折に触れて発しているようにも見える。(中略)
だが、そう思わせること自体が、プーチンのしたたかさだ。(pp.364)
本書において、こんな不吉な文章が記されていました……。
金原俊輔