最近読んだ本345

『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』、八幡和郎著、ワニブックス、2020年。

2020年1月16日、日本における新型コロナウイルスの感染者が初めて確認され、同年2月13日にはお気の毒にも最初の死者が出ました。

そして、八幡氏(1951年生まれ)が本書を書き終えられたのは、2020年5月です。

つまり約4か月間にわたる日本のコロナ対策やコロナがらみの社会状況が整理されている一冊でした。

2020年6月現在、コロナ禍はまだ全然収束していませんし、第2波的なうねりがすでに国内で発生したうえ、今後、第3波・第4波だって襲来しかねない状況。

『日本人がコロナ戦争の~』は、しっかりした「途中経過報告書」と思われました。

勉強になりました。

「巻末プロフィール」によれば、氏はテレビ番組いくつかに出演していらっしゃるそうですが、わたしは観たことがありません。

旗幟鮮明なご意見をおもちのかた、また、明け透けな調子で発言されるかた、みたいです。

著者は、コロナ後のわが国の外交を予測するなかで、国は欧米および中国のあいだに立つべき、なぜならば、

日本は欧米にとって、中国より文明国であり、中国にとっては欧米に比べて理解のある国という本来の好ましい立ち位置に戻れるはずです。(pp.32)

だからである、と述べられました。

わたし自身は今回のできごとを契機に日本はもっと中国と距離を置くべきと考えているので、かならずしも上記に賛成しませんが、著者の場合「経済再建(pp.32)」を見据えてこう結論されており、ご意向は尊重いたします。

集団感染が起こり横浜港内で隔離措置をとられたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」のため横浜市『崎陽軒』が「シウマイ弁当」4000食を寄付したものの、お弁当が船客らに提供されなかった件では、

混乱の中で、十分な調整もせずに当日中しか食べられない料理を送り付けたことは、いささか乱暴なやり方で、クルーズ船からすればありがた迷惑だったことは少し考えればわかることである。(pp.106)

厳しいかもしれない半面、筋がとおったコメントです。

つぎに、本邦は今のところ、かろうじて「医療崩壊」を避けることができているのですが、この話題の際に、

ニュースで、ある開業医の話が取り上げられていました。それは、風邪を引いて熱があるという子供が自分の病院に来たので、念のため保健所に電話して「新型ウイルスの検査をしてほしい」といおうと思ってもなかなかつながらず、やっとつながったと思ったら「そんな軽症では検査できない」といわれたと憤っている姿でした。(中略)
軽症患者の検査を電話で頼もうと粘る不心得な医者がいるから、保健所の電話がつながらないだけです。(pp.115)

ごもっともな指摘でした。

話が進み、第7章では、コロナとの戦いで露(あら)わになった日本社会のIT化の遅れについて考察がなされています。

IT化が遅れているのは深刻な事態でしょうけれども、わたしは「国が過度にIT化していないほうが『サイバー攻撃』を受けたときなどに強いのではないだろうか」と想像しました(パソコンすら苦手なIT弱者の浅慮です。そんな低レベルの者による口出しと受け止めていただければ幸いです)。

第8章「知事・市長の通信簿」は、国内あちこちの首長がおこなった新型コロナウイルス感染拡大への対応に関する寸評でした。

わたしはここで紹介されている首長たちの動きを知りませんでしたから、興味ぶかく読みました。

金原俊輔

前の記事

最近読んだ本344

次の記事

最近読んだ本346