最近読んだ本521:『よくも言ってくれたよな』、中川淳一郎 著、新潮新書、2022年

上掲書は日本社会に対する「時事批評(pp.7)」で、基本テーマは「コロナ騒動(pp.5)」。

わたしは中川氏(1973年生まれ)の著作をこれまで読んだことがなく、お名前も今回初めて知りました。

読了し、氏はおもしろい話題をおもしろく語る、頭が冴えた執筆家でいらっしゃると感じました。

東京都を離れて佐賀県に転居され、現在、同県唐津市在住なのだそうです。

さて書中、多彩なご意見を述べられており、当然ながら、わたしが賛成するご意見、賛成しないご意見が、ありました。

ひとつずつ選んで紹介します。

まず、賛成するご意見。

著者は岸田文雄首相を批判しつつ、

鳩山由紀夫氏の場合は恐らく「世界平和」「中韓と仲良くする」といったことは成し遂げたかったでしょう。安倍晋三氏は「憲法改正」「北方領土奪還」はあったはず。自民党総裁選に出馬経験のある野田聖子氏は「男女同権」で、高市早苗氏は「国防強化」はなんとなく感じられる。
しかし、「経済破壊相」こと西村康稔氏と岸田氏には「とにかくオレは総理大臣になりたいんだもんね! あとは知らん!」というニオイしか感じられないんですよ。(pp.47)

たしかに岸田氏の場合、首相として何を成しとげたいのか、明確ではありません。

中川氏は岸田首相の「仕事をしているふり(pp.45)」な言葉づかいをも論難していらっしゃり、「彼の問題は『言葉』ですよ!(pp.46)」とコメントなさいました。

共感します。

中川氏のご指摘とは少々異なりますが、わたしは岸田首相が(安倍元首相も)談話中に「ま……、ま……、ま……」なる語を頻繁に入れる癖を嫌っています。

つぎに、賛成しないご意見です。

氏は「カタカナ話法」を疑問視する項の冒頭、

この「カタカナ話法」ってものは、「寄り添っていますよ」風のサヨクが使い、結果的に当事者を傷つけることもある実に無神経な話法です。
日本の都道府県でこのカタカナ読みをされるのがどこかといえば、原爆を落とされたヒロシマとナガサキ。米軍基地を抱えているオキナワ。そして原発事故があったフクシマです。(pp.86)

おそらく長崎市民は「ナガサキ」と記されても「無神経だ!」と気分を害したりしないはず。

長崎がナガサキとなるのは、原爆被爆に加え、カトリックの歴史、鎖国時代の貿易港など(たとえば「トーキョー」「ヨコハマ」みたいに)世界的知名度が高いため、という理由とて考えられるのではないでしょうか。

ただし、この件、著者にすべて反対ではなく、わたしは漢字で書ける文字は漢字で書くべきとは思っておりました。

以上、賛成・不賛成ふたつを例示したものの、『よくも言って~』において、当方が同意するご意見のほうが多かったことを付け加えておきます。

金原俊輔