最近読んだ本386
『なぜ、健康法は「効かない」のか?』、奥田昌子著、だいわ文庫、2020年。
京都大学大学院医学研究科で博士(医学)号を取得された内科医の奥田氏が、冷静に、かつ分りやすく、通説および迷信の過ちをご指摘くださいました。
本書であつかわれた通説や迷信は、健康法、食事療法、美容法、ダイエット法、などです。
読者にとって非常に身近なトピックでしょう。
医学の専門家がおこなう反論・訂正ですから、信ぴょう性があり、たいへん有益でした。
いくつか引用します。
まず、「コラーゲン」について。
コラーゲンはお肌に良い物質として人気があるらしく、あちこちで当該物質の広告を見かけます。
ところが、
国立健康・栄養研究所は、これまでに日本で行われた厳密な研究をひととおり調査したうえで、コラーゲンの摂取で皮膚の弾力が改善したデータはわずかに存在するものの、肌のうるおいや、きめの細かさ、しわの改善は見られなかったとしています。(pp.33)
なぜかというと、人の体内に入って「分解された時点でコラーゲンとしての性質がなくなってしまう(pp.32)」ためだそうです。
せっせとコラーゲン摂取をしていた向きは方向転換を検討しなければなりません。
わたし自身はコラーゲンとは無縁な日々を送っています。
つぎに「デトックス」。
デトックスとは「毒出し健康法(pp.63)」の意なのですが、イギリス保健省はウェブサイトにて、
「デトックスには何の根拠もなく、良い結果が得られるという保証もありません。(中略)健康を守る唯一の方法は、節度をもって食べ、定期的に運動することです。夢の特効薬は存在しません」(pp.64)
こう啓蒙している由。
いわれてみればもっともなことです(これまた、当方にはデトックスの体験なんてありません)。
最後に、「植物性の成分」。
さて、「化学物質は怖くて、植物由来なら安心」と考えて本当に間違いないのでしょうか?(中略)
ようするに、「この世に存在する物質はすべて化学物質である」ということです。(pp.115)
なので、植物性という謳(うた)い文句に引きずられる必要はない、とのアドバイスでした。
わたしの場合、植物性なる言葉に何となく魅力をおぼえていましたが(購入こそしていないものの)、もっと落ち着くようにします。
以上のほか、ビタミンC、酵素、グルテンフリー、ヨーグルト、スーパーフード、水素水、マイナスイオン、といった今風な健康・アンチエイジングがらみの栄養だの飲食物だのに関する学術的批判が述べられていました。
とても参考になりました。
『なぜ、健康法は~』を読了後、バランスが良い食事をし、適度な運動をおこない、軽い肥満と戦ったりせず、外見にこだわらないで加齢を受け入れる……、こうした生きかたが望ましいと、あらためて感じた次第です。
金原俊輔