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『ファクトで読む 米中新冷戦とアフター・コロナ』、近藤大介 著、講談社現代新書、2021年。
標題に含まれる「冷戦」という表現、当節の若い人たちは耳にした記憶がないかもしれません。
20世紀中盤から約45年間つづいた、おもにアメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦のあいだの対立をさした言葉です。
両国が軍事的な正面衝突、つまりは「熱戦」、をおこなわなかったため、冷戦と呼ばれました。
そして2021年現在、多くの識者たちがアメリカ・中華人民共和国の関係を「新冷戦」と見なすようになってきています。
では、新冷戦はいつごろ始まったか?
ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任したのは、2017年1月。
翌2018年から、「米中新冷戦」と言われる対立の時代を迎えるのです。(pp.29)
アメリカが中国の製品に追加関税をかける旨を発表した2018年3月がスタートでした。
2021年1月、アメリカ大統領がジョー・バイデン氏に替わり、同氏は親中派と受けとめられていたので変化があろうと思いきや、トランプ並み(場面によってはトランプ以上)の対中強硬姿勢を示しだし、新冷戦はいまだ継続しているところです。
『ファクトで読む~』は、こうした状況下、今後の日本の立ち位置はどうあるべきかを模索したもの。
米中問題に新型コロナウイルス感染症拡大の事案をからませ、さらに東アジア全体も視界にいれながら、著者(1965年生まれ)は考察をすすめられました。
ご結論として、
日本にとって大事なのは、中国と競おうとしないことです。経済力や軍事力で中国に抜かれても気にしない。日本が実効支配している尖閣諸島だけは絶対に守りつつ、日本の国益に基づいて、是々非々の賢明な日中関係を築いてゆけばよいのです。(pp.240)
意見を述べると、わたしは「経済力や軍事力で中国に抜かれても気にしない」のくだりに反対いたします。
もはや経済力・軍事力は中国に大きく抜かれてしまっており、わが国は左記の現実を心底気にして、善後策を練ったうえで対抗しなければならないでしょう。
さもなければ大事な尖閣諸島を守ることなどできないと考えます。
著者は尖閣諸島の件に関し、韓国に占領されてしまっている島根県の竹島を例にあげ、
意識、覚悟の差だと思います。もしも竹島を巡って日韓が開戦したら、おそらく韓国人の多くが、自分の全財産を投げ出してでも韓国軍を支援するでしょう。(中略)
尖閣諸島の状況を、この「韓国人にとっての竹島(独島)」のレベルにまで持っていければ、日本は防衛できることでしょう。(pp.237)
と記されており、これは妥当なご指摘と思われました。
本書は2020年代の日本および世界を予見する際に参考となる一冊です。
読了後、わたしは「新冷戦が熱戦になってしまう危険性」を想像せずにはいられませんでした。
ないとはいえません。
米ソ冷戦時、1962年の「キューバ危機」は、まさに一触即発、あわや核戦争となる雲ゆきだったではないですか。
金原俊輔