メンタルヘルス情報6:ストレスチェックとパート従業員・派遣従業員
今回の話題はストレスチェックの対象者となる従業員の範囲についてです。
労働安全衛生法によれば、ストレスチェック対象者は、以下のいずれかに当てはまる従業員たちとされています。
要は「一般定期健康診断」の対象者と同じなのです。
1 期間の定めのない労働契約により使用される者であること
2 その者の1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
さて、上記1の結果、事業場の正規従業員がストレスチェック対象者となることは、いうまでもないでしょう。
それではパート従業員や派遣従業員はどうなのか?
厚生労働省の『ストレスチェック実施マニュアル(*)』を参考にしながら、ご説明します。
まず、パート従業員。
上記1には、カッコ書きで「期間の定めのある労働契約により使用される者であって(pp.28)」の文言のあと、
〇 契約期間が1年以上の者
〇 契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
〇 1年以上引き続き使用されている者 (pp.28)
と加筆されており、枠内3つのうちのどれかに該当するパート従業員は、ストレスチェックの対象者となります。
上記2の「1週間の所定労働時間数の4分の3以上」は、1日8時間で週5日間つまり週40時間勤務が通常となっている事業場においてでしたら、週30時間以上、を意味します。
この事業場でパート従業員のかたが週30時間以上ご勤務していれば、ご当人はストレスチェックの対象者に含まれるわけです。
また、週労働時間が4分の3未満のパート従業員ではあっても、既述したカッコ書きの「契約期間が1年以上の者」「契約更新により1年以上使用されることが予定されている者」「1年以上引き続き使用されている者」のどれかに該当する場合があります。
こうしたケースでは、そのパート従業員の週の労働時間が「通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上(pp.28)」であるならば、ストレスチェックの対象者にすることが望ましい、とされています。
つぎに、派遣従業員。
パート従業員の箇所で説明した内容と同じく、上記1・上記2のいずれかを満たせば、該当する派遣従業員はストレスチェックの対象者となります。
ただし、派遣従業員にたいしては、派遣元事業場(例:〇〇派遣サービス株式会社)がストレスチェックをおこなう「義務」を有しており、派遣先事業場(例:△△建設株式会社)のほうに義務は課されていません。
後者の場合、強制性がない「努力義務」となっています。
周知のとおり、労働安全衛生法でストレスチェック実施が義務づけられているのは従業員数50名以上の事業場であって、もし派遣元が従業員数50名未満の事業場である場合は、その派遣元にストレスチェック実施義務は発生しません。
すると、従業員数50名未満の派遣元に所属する派遣従業員のかたがたには、派遣元でも派遣先でもストレスチェックを受検できない、という事態が起こり得ます。
そこで法律は、部・課・支店ごとにストレス状態を調べる「集団分析」は「派遣先事業場における派遣労働者も含め(pp.114)」おこなうことが望ましい、そのためにはストレスチェック実施の際に派遣従業員を含むことが望ましい、としました。
各事業場はこれを尊重すべきです。
結果的に、従業員数50名以上の派遣元・派遣先に関与する派遣従業員が、派遣元・派遣先の両方でストレスチェックを受けるような流れになるとしても、なんら問題はありません。
* ストレスチェック制度に関するマニュアル作成委員会 編『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室(平成27年)
金原俊輔