最近読んだマンガ24

『中国嫁日記:ママたいへん編』、井上純一 作画、KADOKAWA enterbrain、2020年。

マンガ家の井上氏(1970年生まれ)は、フィギュアを製作する会社の経営もなさっていた由です。

会社工場が中国にあり、そのご縁で2010年、現地にてお見合いをし、14歳年下の中国人女性と結婚されました。

氏は、ご自分たち国際カップルが日本暮らしをする体験談マンガをブログで連載、連載をマンガ本として出版なさったのが『中国嫁日記』シリーズです。

奥さまの日本語習得をめざす努力や日本社会への不適応・適応、海外出身の妻にたいする夫の愛情が、活写されています。

奥さまのお名前は「月(ゆえ)サン」。

『ママたいへん編』は、月サンが身重になられ、ご出産、これにともなうご夫妻の喜び・覚悟・苦労などが主題となっている作品です。

明るく、しつこさがない絵柄で、ストーリーもほのぼのしており、わたしは楽しく読ませていただきました。

なにより月サンが可愛い……。

カタコト日本語の話しかたが可愛いうえ、2~2.5頭身スタイルも、横棒のみであらわされている目それに高頻度で綻(ほころ)びている口元が配置されたお顔だちも、すべて可愛らしかったです。

わたしは、38ページにあった、月サンがせっせと掃除機をかけていらっしゃる姿が、とても好き。

シーンとしては、夫が注文したダイヤモンド混じりのピンセットがお宅に届けられた際、妻はご自分へのプレゼントと誤解、実はプレゼントでなかったと知ったのち、赤ちゃんをあやしながら、

お父(とう)さんは
おもちゃに
ダイヤモンド
買(か)てあげるけど~
お母(かあ)さんには
買(か)てくれマセンヨ~

ダイヤモンド
おもちゃだけ
デスヨ~♪
ワタシ
ないデスヨ~♪ (pp.81)

と歌った箇所で、わたしは朗笑しました。

彼女は機知に富んでおられます。

当方が最も感動した場面の登場は前半でした。

井上氏が友人に裏切られ、自社資金のほとんどである6000万円を失って落ち込んでいらしたとき、月サンは言ったのです。

大丈夫(だいじょうぶ)
デスヨ
一人(ひとり)ナイ
ダカラ
ずとずと
一緒(いしょ)デスヨ (pp.7)

がっくり参っている配偶者にかけるなぐさめの言葉のなかで、上記よりも相手の心に染みる言葉などないのではないでしょうか?

わたしには染み入り、そして痺(しび)れました。

なお、マンガのタイトルですが、本来「嫁」とは親が息子の妻を指して用いる表現であって、夫が自分の妻をそう呼ぶのは正しくありません。

昨今は、夫が妻を嫁と称呼する語法が世間に定着しつつあるため、完全なまちがいとまではいえないものの、『中国妻日記』もしくは『中国人妻日記』のほうがより妥当です。

金原俊輔