最近読んだマンガ31:『本なら売るほど』1巻~2巻、児島青 作画、KADOKAWA enterbrain、2025年

読書家の主人公が脱サラして「古本 十月堂」を開店する。

彼は若い男性で、名前は不詳(周囲は「十月堂さん」と呼んでいる)。

お店で多様な客たちと出会い、彼は客から有益な影響を受けたり、彼が客に良い影響をおよぼしたりする。

……上掲書は、地味だけれども、清々しく、温かいマンガでした。

とうぜん、いろいろな本が登場し、魅力や価値が説明されます。

わたし自身読書を好み、かれこれ60年ちかく、毎日なにかを読みつづけてきました。

とりわけ書物を語る書物に目がなく、本コラムの「書評・読書論」欄に載せていない作品としては、たとえば、

『読まずに死ねるか!』、内藤陳 著、集英社文庫、1985年

『紙つぶて(全)』、谷沢永一 著、文春文庫、1986年

『活字三昧』、目黒考二 著、角川書店、1992年

『1冊で1000冊:読めるスーパー・ブックガイド』、宮崎哲弥 著、新潮社、2006年

『打ちのめされるようなすごい本』、米原万里 著、文春文庫、2009年

などをひもとき、各著者における「生きる、すなわち、読書する」的な、鬼気せまる乱読の世界に引きずり込まれました。

じつは当方、『本なら売るほど』にも、似たような雰囲気を期待していたのです。

残念ながら期待にはそぐわなかったものの、このマンガのページを繰りつつ、わたしは本をこよなく愛する書中の人物たちに共感をおぼえました。

小泉さんという客が、主人公に向かって、将来「古本 十月堂」に自分の蔵書を預かってもらうことになるかもしれないと伝えていた際、

本読みの 心理は 複雑なのさ
心ない人に 買われるくらいなら 心ある人に 捨てられたい(1巻、P. 33)

と言います。

わたしには分らない「心理」です。

が、本の先行きに対して持論を展開する「本読み」の、軽いわけ知り顔に微笑を誘われました。

つぎに、別の客である中野さん。

彼はたまたま「古本 十月堂」を見つけました。

そして、それ以降、職場の部下たちから、

ねぇ 中野部長 最近 妙に楽しそうじゃない?

そうすか?

そうよ
ネクタイが なんか 浮かれてるし
定時で帰るとき 最初の一歩 ちょっとスキップすんのよ(2巻、P. 14)

こう噂されるほどになったのです。

「ネクタイ」も「スキップ」も、わたしだったら示さない喜びよう。

とはいえ、むかし長崎市内に大型新書店がオープンしたときには、上機嫌状態でした。

『本なら売るほど』には、古書店経営の苦労話や「古書店のあるある」も描述されています。

わたしにとって初耳だった「青木まりこ現象(1巻、P. 156)」を含め……。

作画者の児島氏が、古本・古本屋さんを主題とするマンガを上梓してくださったことを、感謝いたします。

金原俊輔