『言霊USA2017:実況中継 トランプのアメリカ征服』、町山智浩著、文藝春秋、2017年。

町山氏(1962年生まれ)によるアメリカ・レポートのシリーズ最新刊です。

今回は、2017年1月にアメリカ合衆国第45代大統領となられたドナルド・トランプ氏の、大統領選出馬前、選挙活動期間中、そして当選後、にわたる各種エピソードが紹介されました。

著者はトランプ氏の当選を予想していなかった模様で、ある箇所に、

サッチャーから37年後、やっと女性初の大統領が生まれようとしている。(pp.174)

と書いています(サッチャーとはイギリス首相だったマーガレット・サッチャー氏のこと、女性初の大統領とはヒラリー・クリントン候補のこと)。

そうはなりませんでした。

けれども、ここで「著者がトランプ当選を予想できなかった」と責めたりはできません。

多数のマスコミや識者たちも同様でしたし、わたし自身、クリントン氏が勝利すると思いこんでいました。
願ってもいました。

トランプ氏が大統領になってしまった今は、仕方がないので、わたしは氏の安定した政権運営に期待するばかりです。

さて、いつも新奇なアメリカ情報を伝えてくれる著者ですが、本書では比較的「あっ、これは知らなかった」と唸るような話題が乏しく感じられました。

やむを得ないでしょう。
世界が注目したアメリカ大統領選挙、候補者二人に関するさまざまな事実そしてゴシップが、テレビ、新聞、週刊誌、インターネット、などで十分過ぎるほどに取り上げられたのですから。

それでも、ゴシップの多くは候補者の敵対陣営あるいは第三者らが広めた「ウソだったらしい」という問題提起は、町山氏の高度な情報収集力の賜物と思いました。

この件はいわゆる「もうひとつの真実」騒動にもつながっています。(注)

わたしは本シリーズから福澤諭吉『西洋事情』、慶應義塾大学出版会(2009年)および深田祐介『新西洋事情』、新潮文庫(1977年)を連想しました。

町山氏の著作物はわたしにとって「新アメリカ事情」なのです。

(注)2017年1月、トランプ大統領の顧問が大統領側の虚偽発言をかばって用いた言葉で、「もうひとつの事実」とも訳されています。

金原俊輔