『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』、ジョン・ロンソン著、光文社新書、2017年。

本書は、インターネット上でなんらかの失敗をしたため、あるいは、なんらかの失敗がインターネットで取り上げられたため、とてもひどい目に合ってしまった人々のエピソードを集めた、ノンフィクションです。

作家・政治家・宗教者・社会活動家たちが、自業自得とはいえ、被害を受けました。

著者はイギリスのかたです。
その関係でイギリスやアメリカにおける事例が多数あつかわれています。

ひとつだけ内容を紹介しましょう。

2013年12月、ジャスティン・サッコという白人女性に起こった、ツイッターがらみのできごとです。

サッコ氏は、ロンドンの空港で時間をつぶしていたときに他文化への差別的なツイートを投稿し、そして機上の人となりました。

目的地アフリカに到着するまでのあいだに当該ツイートが全世界に拡散されて120万人を超えるツイッター・ユーザーたちの反感を買う大炎上。
彼女は(すくなくともネットの中では)世界一有名な存在になりました。

本人が事態に気づいたのは11時間後、着陸してからだったそうです。

そののち、サッコ氏はご自分の顔写真をネットにさらされ、プライベートな情報も暴かれ、あげく、お勤め先は解雇となってしまいました……。

『ルポ ネットリンチ~』では、約500ページにわたり、インターネットで生じた上記のようなおそろしい各種事件が詳述されています。

わたしはネットに内在する破壊力の強さを知り、暗澹たる気もちになりました(ネット自体は媒体にすぎません。結局、わたしたちひとりひとりが他者を破壊したい欲求や攻撃性をもっているのでしょう)。

ネット状況に疎かった身には有益な読書でした。

また、同書のおかげで、本筋とはやや異なる以下の勉強をすることもできました。

418ページから15ページほど、ジェームズ・ギリガンというアメリカの精神分析医の研究活動が報告されています。

これは、刑務所で勤務していたギリガン医師が囚人たちに敬意を示しつつ接したところ、彼らの多くに改善が見られた、という研究です。

チームは、特に変わったことをしたわけではない。
「ただ、囚人たちを、敬意をもって扱っただけです」ギリガンは私にそう言った。「彼らが内に抱えている気持ちを表に出せる状況を作ろうとしました。不満や希望、あるいは不安なこと、恐れていることなどがあれば、それを口にできるようにしました」
大事なのは、囚人たちが自分を恥じる気持ちを一切持たずに済むようにすることだ。
「チームの中には、囚人たちを人間の屑(くず)呼ばわりする精神分析医もいました。私はその医師に、二度とこの仕事に関わらないでくれと言いました。(後略)」(pp.430)

精神分析は、行動心理学を背景にしたカウンセラーであるわたしにとって、相容れない学派です。
しかし大事なことは大事です。

わたしはカウンセラーとして、人間としても、ギリガン医師の学説を肝に銘じておきたいと思いました。

日本のカウンセラーはアメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズ(1902~1987)による「受容」「共感」を重視していますが、敬意のほうにも視線を向けてみてはどうでしょうか。

金原俊輔