『ワシントン緊急報告 アメリカ大乱』、吉野直也著、日経BP社、2017年。

ドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国の第45代大統領に就任したのは、2017年1月20日。

上掲書は、同日以降おおむね2ヶ月間のうちにアメリカ内外で起こったできごとを、時間軸に沿ってまとめたものです。

外交関連の問題が多数あつかわれ、ほか、わずかですが大統領選挙中のエピソードなども紹介されていました。

全文おそらく新聞記事として使った文章に加筆したのではないでしょうか。

なぜならば、内容が「リアルタイム」っぽかったし、偏らない客観的な書きかたでしたから。

各章に「column」コーナーが設けられ、ここでは著者(1967年生まれ)の主観的なご意見も提示されていました。

たとえば、トランプ大統領がよく「予測不能である」と形容される件について。

オバマの「予測可能」な対中、対北朝鮮は失敗した。
指導者にとって「予測不能」そのものは悪くはない。むしろ力の源泉だ。北朝鮮のような小さな国が「先軍政治」を掲げて瀬戸際戦術で何とか大国と渡り合えている源泉も、この「予測不能」の演出だ。(中略)
問題はトランプのような超大国、米国の指導者が「予測不能」なだけでいいのか、という問いかけだ。これは程度の問題ということになるのだろう。
北朝鮮のように「瀬戸際戦術」だけだと、同盟国や関係国は戸惑う。すべてが「予測可能」である必要はないが、同盟関係は一定程度「予測可能」でなければ、立ちゆかなくなる。トランプの「予測不能」への懸念はまさにその点にある。(pp.172)

「なるほど」と頷(うなず)ける一節です。

外交において虚虚実実のかけひきをしなければならない首脳たち・政治家たちは、予測不能な面を有することがむしろ望ましいのでしょう。

さて、2017年7月現在の時点で『アメリカ大乱』に接しても、日々のニュースを通し既知である情報や新聞で読んだ情報が多く、読者はそれほどありがたみを感じないかもしれません。

しかし、5年後、10年後、つまり将来、2017年前半のアメリカ合衆国の動向を振り返りたいときに、本書は、整理された、貴重な記録のひとつになっているのではないかと想像しました。

金原俊輔