『米中激突:戦争か取引か』、陳破空著、文春新書、2017年。

アメリカ合衆国と中華人民共和国が展開している虚々実々のかけひきを俯瞰した政治評論です。

わたしは以前、同じ著者による『日米中アジア開戦』、文春新書(2014年)を読み、著者が情報通でいらっしゃることと政治の裏側を読む洞察力を有しておられることに、心から敬服しました。

とても頭脳明晰なかたです。

この『米中激突』も完成度が高い作品でした。

武器・兵器を用いた両国の衝突というよりは、国際社会のリーダーの座をめぐる「同盟国・友好国集め」的なぶつかり合いを、精緻に分析しています。

著者は、米中の政治家たちが置かれている細かな状況にまで踏み込み、彼らの言動の解釈をおこないました。

たとえば、2017年のドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席の会談に関して、

会談を終えたトランプは、「会談は真の進展を得た。非常に大きな進展だ」と記者に語った。これは、習近平が実質的な妥協と譲歩を示したということである。どんな進展があったのか細かく語らないのは、詳細は伏せてほしい、との中国側の求めにトランプが応じ、習近平の面子を立ててやったからである。
トランプの言葉に秘められた真の意味とは、「アメリカがかけた圧力は効き目があったよ。中国はものすごく大きな譲歩をした」というものだ。(pp.226)

以上のように解きほぐされています(どこまでが事実で、どこからが推測なのかは、わたしには分りません)。

新奇な角度からの指摘も随所でなさり、中国が北朝鮮を支援している件についてはこうでした。

もし北朝鮮が中国に核の先制攻撃を仕掛けてきたら、中国は、対処できないだろう。(中略)中国には、核によって反撃する時間もその能力もない。中国が北朝鮮に対して行っている、いわゆる「経済援助」の実態とは、「朝貢」なのである。漢が匈奴に、唐が吐蕃にしたような朝貢である。(pp.200)

まさに「目からうろこ」の指摘といえるでしょう。

陳氏は1963年中国生まれで、1996年に米国へ亡命されました。

そのせいもあって氏の言説はアメリカ寄りです。

基本的にアメリカを信頼しているわたしには、抵抗なく受けいれることができる内容でした。

本書の結論は、

いつの日か、アメリカが再び世界を驚かせる日がやってくるだろう。スペイン軍艦を撃沈し、スペインの植民地を奪い取った1898年の米西戦争の時のように。その時、アメリカが対抗する国は、もちろんスペインではなく、またロシアだとも限らない。最も可能性が大きいのは、中国であろう。(pp.246)

2017年8月の時点で最も可能性が大きい相手は、どうやら北朝鮮になったみたいです。

金原俊輔