『台湾はなぜ親日なのか:元駐在員が見た台湾の素顔』、田代正廣著、彩図社、2017年。

著者(1942年生まれ)は日本の電子機器企業に所属していたころ、1980年から5年間、台湾の子会社で勤務されました。

訪台当初は「台湾-日本」の歴史をそれほどご存じではなかったようです。

しかし、ご勉強をはじめて徐々にくわしくなられ、本を出されるまでに至りました。
その本が上掲書です。

内容は、後藤新平や烏山頭ダムあるいは哈日族(ハーリーズー)といった定番史実が紹介され、目新しい話題は含まれていませんでした。

いっぽう、IT業界に身を置かれていた著者ならではの情報として、

鴻海(ホンハイ)の郭台銘(かくたいめい)会長だ。2014年の統一地方選挙までは国民党のスポンサーとして、民進党を天敵として徹底的にいじめ抜き、また政商としても暗躍していたが、その統一地方選挙での大敗で「国民党の歴史の終わり」に気が付き、2016年の国政選挙では国民党のスポンサーを降りていた。
郭会長は台湾籍であるが、「中国人」だ。戦後、蒋介石率いる国民党と外省人を含めた200万人の人々が台湾に逃れてきたが、郭会長はその子孫である。(中略)
その郭会長も、馬英九時代と異なり、蔡英文総統の政権体制では「政商」として活動する余地は全くなく、経済活動の舞台を変える必要に迫られた。それが鴻海によるシャープの買収だ。日本に舞台を変えたのだ。(pp.158)

こんな得がたい一節があり、わたしは危機感をおぼえました。

それはさておき、日本人が執筆した台湾に関する書物を読んでいると、かならずどこかで台湾と日本のあいだに生じた温かいエピソードが紹介されます。

本書も例外ではありませんでした。

日本と台湾には国交がないけれども、それによって反対に民間の交流が深まり、その絆は強くなっている。民間交流の先駆けとなったのが、1986年に調印された「秋田県の田沢湖」と「高雄の澄清湖」との姉妹湖縁結びの提携である。当時は、日本の新聞も中国に諂(へつら)っていた時代であり、勇気ある提携だったと言えよう。この提携について秋田県が田沢湖町に対し、国の意向に反するとして圧力を掛けてきた。しかし、地元の人々はこれは民間が行うことだとして、県の圧力をはねのけた。それ以後、日本側の自治体が台湾の多くの自治体と姉妹関係や教育観光協定などを結んでいる。(pp.177)

田沢湖町、グッジョブ!

さあ、ここでわたしも、自分が体験した心温まるエピソードを書かせていただきます。

つい先日、勤務先の大学で台湾からきてくれた留学生と雑談をしていた際、話が野球「2013年WBC日本対台湾戦」におよびました。

留学生は台南市に設置されたパブリック・ビューイング会場で試合を観ていたそうですが、観戦中「心臓が弱くなった」とのことです。

当該試合は追いつ追われつの大接戦でしたから、わたしは「それで心臓にきてしまったのだろう」と理解しました。
まちがいでした。

なんと、留学生や周囲のかたがたは、台湾チーム攻撃時には台湾を応援し、日本チームの攻撃になったら今度は日本を応援したのだそうです。

そのため休む暇がなくて心臓が疲れた由でした。

ありがたいです。
台湾の人たちがそこまで日本を身近に想ってくださっていることを知り、感激しました。

さて、ほっこりしてきたところで、わたしがこれまでに読んだ「台湾がテーマ」の出版物トップ・テンを発表いたします。

今回は著者が日本人であるものに限定しました(台湾のかたがお書きになった日本関係の書籍ランキングは、また別の機会に報告させてもらいます)。

『台湾はなぜ親日なのか』については、本項で解説したばかりですので、省きました。

第1位 『汝、ふたつの故国に殉ず:台湾で「英雄」となったある日本人の物語』、門田隆将著、角川書店(2016年)

第2位 『街道をゆく 40 台湾紀行』、司馬遼太郎著、朝日文庫(2009年)

第3位 『最も親日的な隣国 台湾の命運』、岡田英弘著、弓立社(1996年)

第4位 『日本と台湾:なぜ、両国は運命共同体なのか』、加瀬英明著、祥伝社新書(2013年)

第5位 『日本の命運は台湾にあり』、永山英樹著、まどか出版(2008年)

第6位 『台湾に生きている「日本」』、片倉佳史著、祥伝社新書(2009年)

第7位 『アリガト謝謝』、木下諄一著、講談社(2017年)

第8位 『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』、光瀬憲子著、じっぴコンパクト新書(2015年)

第9位 『ヤバイほどおもしろ楽しい台湾見聞録』、渡邉哲也著、ビジネス社(2015年)

第10位 『台湾とは何か』、野嶋剛著、ちくま新書(2016年)

この10冊、やはりどれもが(たとえ本筋から脱線しても)「台湾-日本」間の温かいエピソードを紹介しています。

書き手たちは抑えきれなかったのでしょう。

金原俊輔