『終わった漫画家 1』、福満しげゆき作画、講談社、2017年。

文学の世界に「私小説」と呼ばれるジャンルがあります。

その表現を用いれば、福満氏(1976年生まれ)はこれまで「私マンガ」的なものを多数発表されてきました。

ご自分の若いころのできごとやご家族のことなどを、個性的・魅力的な絵柄を通し、じっくり、ほのぼの、描かれています。

いっぽう本作は、もっと「フィクション」寄りの内容でした。

売れていない男性マンガ家が主人公で、主人公は若い女性アシスタント2名を採用します。

上記設定のもと、第1巻は、彼がふたりの女性に挟(はさ)まれ翻弄される、オタオタする、という話でした。

かつて読んだ諸作と違ってスピードを感じました。

絵が個性的・魅力的だったのはあいかわらず。

わたしは作者の描線のなかで、登場人物たちが着ている服の皺(しわ)の描きかたがとりわけ好きで、「さすがにプロはお上手だな」と感心しています。

では、読後感はどうだったかというと、勝手ながら(そして失礼ながら)、これはわたしが福満氏に求めていたマンガではありませんでした。

今後、氏がマンガ家としてご活動をつづけるために新境地を開拓してゆかなければならない状況は、重々承知しているつもりです。

承知してはいるのですが、わたしには今までみたいな「じっくり・ほのぼの」タッチの「私マンガ」路線のほうが合っているようでした。

けっして『終わった漫画家』自体のできばえが悪かったわけではないのです。

たとえば、連載や出版がなくなってしまったマンガ家は、

もう若くもなく!

社会経験もなく!

世間知らずでプライドばかり高い!

ただの低学歴(pp.10)

こうしたくだりなどは、読者を吸引する力があり、おもしろくも悲痛でした。

第1巻のスピードを維持しつつストーリーが順調に展開してゆくことを期待しています。

金原俊輔