『ひねもすのたり日記 第1集』、ちばてつや作画、小学館、2018年。

巨匠が肩の力をぬき手がけている、実は力をぬいてなどいないかもしれないものの、すくなくともそういうくつろいだ雰囲気が漂う、自伝マンガです。

ちば氏(1939年生まれ)は、わたしが子どもだったころから、マンガ界の第一線で活躍されていました。

多数の話題作をおもちです。

わたしが傑作と心酔した作品は『1・2・3と4・5・ロク』(講談社)および『紫電改のタカ』(講談社)

どちらも1960年代の発表でした。

そのちば氏もご高齢となり、近年、しばらくのあいだ休筆されていたそうです。

ひさびさの雑誌連載が『ひねもすのたり日記』。

第1集では、第2次世界大戦の敗戦後、同氏とご家族が満州国から日本へ引き揚げてくるまでの艱難辛苦が描かれていました。

以上に交互するような形式で、ご自身の現在の日常生活も紹介されています。

オムニバスっぽい展開でした。

わたしのような古いファンが安心感をおぼえるむかし通りの絵柄、しかも全ページがカラーです。

登場人物たちは魅力的であり、ストーリーもしっかりしていました。

やはり、ちば氏は最高峰のマンガ家です。

この『ひねもす~』は佳作になるでしょう。

なお、「引き揚げ」編において蚊帳(かや)が登場する場面があったのですが、作者はコマの外に蚊帳とは何であるかのご説明を書かれていました。

「いまの若い読者は蚊帳のことを知らない」と想定した親切心でしょうか。

58ページの台詞「夭折(ようせつ)」にも、ルビに加え「若死に」というカッコ書きがついていました。

「現在の日常」編のほうで、氏が栃木県・文星芸術大学教授としてお仕事をされている話がありましたから、若者たちのことをよくご存じなわけです。

金原俊輔