『平成史』、佐藤優、片山杜秀共著、小学館、2018年。

佐藤氏(1960年生まれ)と片山氏(1963年生まれ)による長時間の対談を書籍化したものです。

対談テーマは、2019年4月末に終了する予定の「平成時代」。

ご両所は、全446ページにわたって、平成元年から順を追いつつ、時代を振り返ってゆかれます。

おふたりともあり余るほどの知識・情報をおもちで、小さな話題も大きな話題も含め、世間の隅々にまで視線を注がれた対談となりました。

ご意見が個性的であり、比喩も当意即妙でした。

堪能しました。

例を3つあげます。

まず、政治家の田中眞紀子氏に関し、

佐藤  歯車が狂えば、田中首相誕生の可能性も確かにあった。そうなったらトランプとドゥテルテを足して3で割ったような騒動になっていたでしょうね。
片山  なるほど。日本はトランプ政治の混乱を先取りした可能性もあったのか。(pp.120)

つづいて、京都大学の山中伸弥教授が研究している「iPS細胞」。

佐藤  日本人は、山中教授のiPS細胞を歓迎するにもかかわらず、なぜ遺伝子組み換えの食物を恐れるのか。iPS細胞も細胞の遺伝子を組み換える話ですよね。なぜ片方だけが絶賛されて、もう一方は嫌悪されるのか。(後略)
片山  論理ではなく、感覚なのでしょうね。(中略)思考停止して感覚で判断している。(pp.255)

最後は「東京オリンピック」がらみで、

片山  オリンピックに騙される人はたくさんいるわけで。いまのオリンピックは、死ぬまでの蓄えがあり、年金をもらえる人が楽しむイベントとして2020年まで間を持たせるためのもの以上の何かがあるのでしょうか。(後略)
佐藤  オリンピックを2年後に控えたいま、私は1931年に刊行された中山忠直の『日本人の偉さの研究』を思い出すんです。彼は40年に開催される予定だった東京オリンピックに浮かれる日本人をとても批判している。こんなオリンピックは実現できない。(pp.279)

参考になるご発言です。

このほか、本書は、わたし個人の考えが全然およんでいなかった多数の事柄について、新知識を提供してくれました。

うち、ふたつを紹介します。

ひとつめは、小惑星探査機「はやぶさ」の話題。

佐藤  日本は小さな惑星まで飛ばして、そこで作業して7年後に正確に戻せた。ウラン濃縮爆弾を搭載した探査機を宇宙に打ち上げて、必要なときに必要な場所に落とすことができる。さらに探査機を使って各国の衛星を落とすことも可能になる。これはすごい技術なんですよ。(pp.218)

知らなかった……。

もうひとつは議員数の件です。

片山  日本では、とくにリベラル派は議員の数が多すぎると考えている。本当にそうなのか考える必要があります。民主主義の理想は、国民全員が政治に参加すること。だとすれば、議員の数は多ければ多い方がいい。(pp.358)

考えていなかった……。

『平成史』は、おもしろいうえに役に立つ、読んだ結果、政治や人物や事件を深く(裏側からも)眺めることができるようになる、わたしにとってそのような一冊でした。

金原俊輔