『日本が危ない! 一帯一路の罠:マスコミが報道しない中国の世界戦略』、宮崎正弘著、ハート出版、2019年。

「一帯一路」とは、中華人民共和国の習近平国家主席が2013年に提唱した、経済そして外交にかかる政策です。

中国を基点に陸路と海路でアジア・ロシア・EU・中東・アフリカの諸国をむすんで巨大な通商圏をつくろうというもの。

上掲書の第9ページによれば、一帯一路構想をとおして生じ得る利益は約8兆ドル(日本円では880兆円ぐらい)の由でした。

比較のために記すと、2019年度のわが国の一般会計予算は101兆円です。

上掲書は、この気宇壮大な構想が実のところ世界各地で順調には進んでいない状況を調査・報告した、ルポルタージュでした。

一帯一路は停滞したり頓挫したりしたプロジェクトが多いばかりではなく、関係する国々からの不信・非難も高じているとのこと。

代表例はマレーシアで、

マハティール首相は中国主導の「新幹線プロジェクト」の中止、「ボルネオのガスパイプライン工事」の中止を発表した。総額230億ドルを超える、習近平の目玉「一帯一路」プロジェクトの一環で政治宣伝の材料でもあった。(pp.78)

ベネズエラは、

国民は、およそ150万人がコロンビアやブラジルに避難し、これは欧州におけるシリア難民の数に匹敵する。
中国のカネに依存して一帯一路構想に飛びつき、原油代金が1バーレル=100ドル時代に有り余る外貨を医療無料、大学無料などバラマキをやって大衆迎合政策をとった結果、原油代金の激減と同時に経済は失速した。(pp.233)

イタリアでは、

メディアが騒ぎ出した。
「中国がピレウス港を買収したように、トリエステ港は中国に奪われるのではないか」
「スリランカの例にあるように、将来、中国の軍事基地となるのでは」
「NATOと対立を煽る結果にならないか」
楽天的なイタリア人から、こういう悲観的見通しが先にでることは珍しい。(pp.121)

以上の動きの結果、

中国の掲げた「一帯一路」の50パーセントがキャンセルの憂き目をみており、この無駄なプロジェクトに投下されたカネは300億ドルに達する。(pp.145)

こうなってしまったそうです。

ただし、2019年3月、前出のイタリアは一帯一路への正式な支持を表明して、中国との覚え書きに署名しました。

中国が投資する運びになったイタリアの港は、引用文に登場したトリエステ港ではなく、ジェノバ港みたいです……。

それはさておき、本書において著者(1946年生まれ)は徹頭徹尾一帯一路を批判する筆致を示されました。

わたしはそれほどでもありません。

なぜかというと、わたしの場合、外交は自国の利益のみを追求するやりとり、このように考えているからです。

利益は目先の利益であってかまわないし、数十年先・数百年先に発生する利益であってもかまわないでしょう。

経済的な利益にかぎらず、当事国にたいする相手国からの「親近感」「尊敬」「畏れ」など心理的な利益であっても結構です。

いずれにしても利益追求が大事。

そこで、中国が自国の利益を図り一帯一路構想を掲げたことはまったく問題ない、と考量するわけです。

では、日本はどう対処すればよいのか。

一帯一路が国家の利益につながると判断するのならば関わるべきであり、利益にならないと判断するのだったら関わらない。

大上段に振りかぶったあげく、こんな当たりまえの意見しか書けず、恐縮です。

後者のほうが無難だろうとは思っていますが。

金原俊輔