『EQ 2.0:「心の知能指数」を高める66のテクニック』、トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス共著、サンガ、2019年。

「EQ」とは、アメリカ人ジャーナリストであるダニエル・ゴールマン(1946年生まれ)が紹介した概念で、日本においては「心の知能指数」「感情指数」「感じる知性」などと訳されています。

もともとは同じアメリカ合衆国の行動主義心理学者エドワード・ソーンダイク(1874~1949)が「社会的知性」と名付けて注目していたもの。

その後、幾度か名称や中身が変わりました。

やがてEQという表現に落ち着き、

ダニエル・ゴールマン著『EQ:こころの知能指数』、講談社(1996年)

のおかげで、広く世界に知られるようになった次第です。

ブラッドベリーとグリーブス著の『EQ 2.0』では、

IQレベルが最も高い人たちが、平均的なIQの人たちよりも成功している確率は20パーセントだったのに、平均的なIQの人たちがIQレベルの最も高い人より成功している確率は70パーセントだった。この不思議な現象を見て、IQこそ成功の要因だという昔からの思い込みが大きく揺らいだ。(中略)
そして長年の研究といくつもの実験を経て、心の知能指数、すなわちEQこそが決定的な要因だと突き止めたのだ。(pp.20)

こう結論されました。

成績・学力・学歴に結実するIQ的な能力よりも、温かさ・思いやり・コミュニケーション上手といったEQ的な能力のほうが世の中ではものをいう、まとめればこんな風になります。

納得せざるを得ません。

さて、行動主義心理学者のわたしは、ソーンダイクを尊敬しています。

彼はアメリカのウエスレヤン大学の卒業生であり、長崎ウエスレヤン大学に長らく勤務していた身としては親近感もおぼえます。

そのせいなのかEQについて考えることが好きです。

人が自分自身の認知(知る、判断する、解釈する、などの機能)をいちだん上から認知する働きを「メタ認知」と呼びますが、わたしは、EQを活性化させるにあたって「メタ認知の役割が重要なのでは?」と想定していました。

『EQ 2.0』書では「すべての人がEQを上げる(pp.22)」ために、

1 自己認識スキル

2 自己管理スキル

3 社会的認識スキル

4 人間関係管理スキル

以上が大事であると述べ、4つそれぞれに応じた計66種類のテクニックを提言しています。

うち「1 自己認識スキル」で書かれているほとんどの各論的アドバイスが前記メタ認知がらみでした。

意を強くしたいっぽう、結局、わたしが想定していた事項はまるで十全ではなく、EQアップを図るにあたって目を向けるべき要素がほかにもたくさん存在している模様でした。

勉強になります。

本書は主として社会に出た大人たちを念頭に執筆されていました。

高校生や大学生よりも勤労者が読むのに適した作品といえるでしょう。

金原俊輔