『習近平の敗北:紅い帝国・中国の危機』、福島香織著、ワニブックス、2019年。

東アジア方面に関する著書が多いジャーナリスト福島氏(1967年生まれ)の新作です。

わたしは中国を知りたいときや考察したいときにはかならず氏のご見識を参考にすることとしており、今回は、

渡邉哲也、福島香織共著『中国大自滅:世界から排除される「ウソと略奪」の中華帝国の末路』、徳間書店(2019年)

も併せ読みながら、多々、得がたい情報を入手しました。

2019年に入って、中国人の友人と会うと、必ず話題になるのが「逢九必乱」のジンクスの話でした。末尾に9のつく年は必乱の年。必ず乱や厄災が起きるのだ、と。(pp.3)

福島氏はこんな枕を振ったのち、現下の中国における政治・経済・宗教・軍備などを詳細に検討していらっしゃいます。

「一帯一路」構想の伸び悩み、南シナ海問題、台湾にたいする恫喝、「中国製造2025」の停滞、アメリカとの貿易摩擦など、しばしば日本のメディアでも取りあげられている諸事象に目を配りつつの論考でした。

そして、2019年3月にひらかれた全国人民代表大会(全人代)。

「静かな全人代」つまり、習近平がほとんど存在感を発揮しなかった全人代となったのです。これはこの1年間で習近平のやろうとしたこと、政策も含めてすべて「敗北」した結果といえるかもしれません。(pp.326)

上記のように結論づけられました。

いつものことですが、たいへん勉強になります。

わたしは『習近平の敗北』をひもといて、ふたつの問題に思いを馳(は)せました。

まず、香港の件。

香港が直面している問題は、一国二制度が揺らいでいるとか、崩れたとか、地盤沈下して一地方都市に落ちぶれつつあるとか、そういう段階をすでに超えていると思うのです。香港の中国化により、香港の一部の人が排除されたり弾圧されたりするとき、彼らの抵抗運動が発火点となって何かが起きることを中国共産党内では想定している人がいて、実際に起こりうる要因がじわじわ増えているのではないでしょうか。(pp.209)

2019年7月現在、香港から中国への容疑者引き渡しを可能にしてしまう「逃亡犯条例」をめぐり、反対する香港では大規模デモが発生・継続しています。

いまのところ、著者がご指摘したとおりの流れになっているわけです。

個人的には香港の皆さまを応援しています。

2019年6月の「G20大阪サミット」で、安倍首相が来日された中国・習主席に「一国二制度のもと、自由で開かれた香港が繁栄してゆくことが重要である」旨を述べたと知り、欣快至極でした。

2番目です。

いまの日本では、教育機関(とくに、私立大学や私立短大さらに私立専門学校)が定員数を満たすため非常にたくさんの中国人学生を入学させています。

自国の若者数が少ないので中国から留学生を獲得して学校運営に役立てる、これは安直すぎる発想であり、要は「お金が最優先」、かつて「エコノミック・アニマル」と軽蔑された日本人の残念な姿すら髣髴(ほうふつ)とさせます。

安直なだけではなく、無責任でもあるでしょう。

自分の学校で学んでいる中国人学生たちに、いつ、新疆ウイグル自治区出身の留学生およびそのご家族たちが経験されている悲痛な事態が起こるかもしれない、そうした想像力・配慮が、迎える側の教育機関には皆無なのです。

わたしは、わが国の各教育機関は、大陸からの志願者の入学許可を抑制すべきと考えます。

同時に、いざとなった際に留学生たちを日本国内で守りぬく、とことんまで面倒を見る、そういう覚悟や力を有した教育機関であるのならば(真の「日中友好」のため)むしろより多数の志願者を受け入れてほしい、こう思っています。

金原俊輔