『韓国 内なる分断:葛藤する政治、疲弊する国民』、池畑修平著、平凡社新書、2019年。

韓国に関する新しい情報を獲得できた本でした。

わたしにとって何が新情報だったかというと、文在寅・現大統領の指向性です。

日本では、文在寅をめぐる誤解が広がってきた観がある。いわく、文在寅は「反日」であり、意図的に日本との関係を損ねようして攻勢に出ている、と。「親日残滓の清算」などと言われてしまっては、ますます、そういうレッテルが定着するかもしれない。
実態は異なる。(pp.19)

文在寅、そして彼が体現している進歩派が清算したがっているのは、現在の日本という国や日本人ではなく、同じ韓国人のうちの保守派なのだ。(pp.21)

要するに、文大統領が目の敵にしているのは我国ではなく、韓国内の保守派「自由韓国党(旧:セヌリ党)」であり、保守派を象徴する朴槿恵・前大統領である、とのこと。

実例も上掲書内で多々紹介されています。

つぎの引用がそのうちのひとつ。

2015年12月、安倍政権と朴政権はいわゆる「慰安婦問題」について「最終的かつ不可逆的」な合意を交わしました。

しかし、朴大統領が弾劾されたのち、新大統領・文氏は、

2015年の日韓合意がどのように結ばれたのかを検証する「タスクフォース」を立ち上げた。(中略)
検証作業をよく知る当事者いわく、「彼は初めこそ客観的な姿勢で外交資料を読み込んでいったが、次第に単なる粗探しに変わった」と証言する。
結局、「タスクフォース」は検証内容をまとめた報告書を発表し、「日韓の間には日本大使館前の少女像などに関する裏合意があった」、「被害者たちからの意見集約が不十分だった」といったレッテルを貼った。
注目すべきは、そうした烙印を押しても、報告書の趣旨は日本政府への批判ではなく、あくまで朴政権の糾弾であったことだ。「反日」ではなく、あくまで保守派つぶし。(pp.247)

こんな風だったそうです。

文大統領の言動ひとつひとつが、(反日的に見えて、実は)反日を指向したものではなく、「反・朴政権」のほうを指向している……。

知りませんでした。

これまで接してきた各種報道にたいする自分の解釈を変更しなければならなくなりました。

言われてみれば、文大統領の奥様は茶道を教わっていらっしゃり、お嬢様は日本の私立大学に留学された、と聞いています。

息子さんは息子さんで、日本アニメのファンらしいです。

もし文氏が骨の髄まで反日だったら、ご家庭においてそういう事態は生じなかったでしょう。

納得がゆきました。

では、文大統領における反・朴政権指向をどう解釈すればよいのか。

わたしは、

辺真一、勝又壽良共著『疑獄:パククネの知られざる大罪』、宝島社(2017年)

を読んだ際に「いくらなんでも朴大統領はあまりにひどい」と感じました。

したがって、文大統領が朴氏を嫌う理由が、わからないではありません。

とはいえ、いま文氏が北朝鮮に肩入れしている政治状況は、韓国や日本を危険にさらす、韓国がアメリカの怒りを買う、世界に不安を与える、北朝鮮・金正恩委員長の独裁を認める、北朝鮮の人権問題をないがしろにする、などの末路をたどり得て、非常に深刻と思います。

上記の政治状況は文大統領による朴・前大統領がおこなったことへの卓袱台(ちゃぶだい)返しです。

反感のあまりそういう行為に没頭しすぎると、文氏ご自身もやがて国民から弾劾される羽目に陥ってしまうのではないでしょうか。

金原俊輔