『誰の味方でもありません』、古市憲寿著、新潮新書、2019年。

肩がこらない「社会時評」っぽいエッセイ集でした。

わたしは著者(1985年生まれ)の作品を今回初めて読み、構成の巧みさ、文章のわかりやすさ、上手なヒネリ、などによって醸しだされる全体的にふわっとした雰囲気に、惹かれました。

各話題のタイトルのつけかたも秀逸です。

第1章から例を取ると、

「『反韓』こそ真の韓流ファンである」

「出版社は儲からないが読書は消えない」

第2章では、

「天才は大衆に支持されてこそ」

「雑誌とネットは発火点が違う」

第3章、

「禁じたものは流行りだす」

「月に行ったら感動するのだろうか」

以上、どのタイトルも、読者側の「読んでみたい」意欲をそそることでしょう。

この本について難をいえば、内容があっさりしすぎているせいでしょうか、読了後に著者の言説・主張が頭にのこらない傾向がある点です。

現に、わたしは上述した計8つのタイトルのもとで著者が何をお書きになっていたか、すでに忘れてしまいました。

著者よりもわたし自身のほうの責任かもしれませんが……。

それはそうと、第3章「その秘境は長崎にあった」項では、長崎市の伊王島「アイランドルミナ」訪問記が登場します。

アイランドルミナとは、

体験型ナイトウォークである。島の一角がまるごとデジタルアート施設になっていて、その中で光と映像を楽しみながら、物語を経験することができる。(中略)
結論から言うと、行くべき価値のある場所だった。深い森の中で蛍の群れのような光に包まれたり、海に浮かぶ巨大な龍にびっくりさせられたり、ものすごく上質なエンターテインメント施設。(中略)
やや残念なのは、インスタ映えの悪さ。手元のiPhoneで撮影しても、なかなかアイランドルミナの素晴らしさを伝えることができないのだ。この時代、写真や動画で共有しにくいものは、なかなか広まらない。(pp.233)

わたしはアイランドルミナへ行ったことはありません。

とはいえ、自分が住んでいる街に所在するレジャー施設を激賞してくださり感謝いたしますし、著者のアドバイスは非常に大事と考えます。

金原俊輔