『メタ認知で「学ぶ力」を高める:認知心理学が解き明かす効果的学習法』、三宮真智子著、北大路書房、2018年。

「メタ認知」とは、

認知についての認知です。つまり、自分自身や他者の行う認知活動を意識化して、もう一段上からとらえることを意味します。いわば、頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれるもうひとりの自分のようなものです。(pp.14)

簡にして要を得たご説明です。

このメタ認知、1970年代にアメリカの発達心理学者ジョン・フレイヴェル(1928年生まれ)が提唱した概念で、以降、心理学の世界において少しずつ共有されだしました。

わたしは、心理学者たちが各時期・各国でバラバラにおこなってきた諸研究のうちのいくつかをひとつに収れんさせる力をもった言葉、と評価しています。

さて、上掲書は、メタ認知が人の学習行動に関与する状況を展望したのち、メタ認知を駆使した勉強の仕方を指南する、という内容でした。

巻末「引用文献」「著者紹介」によれば、著者の三宮氏は認知心理学を専攻されており、メタ認知についての著書や日本語論文・英語論文が多い大家。

だからでしょう。

この本は必要な情報が網羅された、十全な学術書です。

本書を読んでいた際、中学校や高等学校で長らくスクール・カウンセリングをおこなってきた関係で、わたしは中高生のメタ認知発達に思いを巡(めぐ)らしました。

第1部「メタ認知を理解するための20のトピック」内の「トピック10 学習に困難を抱える子どもの支援とメタ認知」「トピック11 協同学習における他者とのやりとりとメタ認知」などの話題に触発された側面もあります。

思いを巡らしたのは、つぎのような事項でした。

1 子ども時代に「ゲーム依存」になると、当人のメタ認知発達が阻害されてしまうのではないか

2 子ども時代のゲーム依存に比べれば、「ネット依存」のほうは、それほど強くメタ認知の発達を阻害しないのではないか

3 子どもの語彙(ごい)数とメタ認知の発達度には相関関係があるのではないか、もし左記仮説が支持されるとしたら、メタ認知発達を促すためには読書が大切なのではないか

4 読書が大切である(かもしれない)いっぽう、子どもが読書にふけり過ぎると、ネット依存と同程度のメタ認知発達阻害が発生するのではないか

5 子ども時代に、バランスよく、友人とつきあったり、遊んだり、スポーツに興じたり、読書・勉強をしたりすることが、当人のメタ認知発達に最も有効なのではないか

さらに、発達障害児の(おそらくは特性があるであろう)メタ認知を解き明かす研究が進めば、保護者や教師に役立つはず、本人たちにも役立つのは間違いない、と推察しました。

バイリンガルな子とそうでない子のメタ認知発達の差異も知りたい気がします……。

ところで『メタ認知で「学ぶ力」~』は、わが専門である学習心理学の知見を参照しながら助言しており、たとえば、第2部「メタ認知的知識を学習と教育に活かす」の、

自分で自分に対する賞罰を決めれば、他者に決められる場合とは異なり、副作用の心配はありません。
このように、条件づけの原理を用いることで、自分で自分のやる気を引き出す自己動機づけが可能になります。(pp.154)

これなどは妥当なアドバイスと感じました(ただし、自分自身でおこなう条件づけと「他者に決められる」条件づけとのあいだに「副作用の心配」の違いはありません。どちらの場合も同じように副作用を心配しておくべきです)。

いずれにしても種々の学術的刺激を受けた読書となりました。

金原俊輔