最近読んだ本406

『変見自在 コロナが教えてくれた大悪党』、高山正之著、新潮社、2021年。

歴史や外交に識見を有していらっしゃる高山氏(1942年生まれ)の社会時評。

長いシリーズとなっており、わたしは全シリーズの半分ちかくを読んで、何かしらものごとを考える際の手がかりにしています。

本コラムでは「最近読んだ本367」にて前作の感想を述べました。

2021年早々に出版された『コロナが教えてくれた大悪党』も学ぶところが多い内容でした。

以下、同書内よりふたつの話題を取り上げ、コメントいたします。

まず第1章における「『文化の日』は『マッカーサーの日』だった」項。

意味不明の祝日がまだある。11月3日の「文化の日」もそうだ。
もとは明治天皇の誕生日の「明治節」なのはみな知っている。これも素直に「明治の日」にしようという声が広まっている。(pp.49)

1946年11月3日は、いわゆる「マッカーサー憲法」公布の日で、日本嫌いの米国人ダグラス・マッカーサー元帥(1880~1964)がわざと「明治節」に公布日をぶつけたうえ「憲法記念日」ではない祝日名を命じた結果、紆余曲折を経て「文化の日」に落ち着いた由でした。

初耳です。

高山氏ご自身は「憲法記念日」の名称を希望なさっているみたいでした。

わたしとしては「明治の日」「憲法記念日」どちらも妥当と考えます。

しかしながら、諸般の事情で「明治~」「憲法~」の両方が使えないような場合、いっそ「マンガの日」にしてみてはいかがでしょう。

というのは、11月3日はマンガの神様・手塚治虫(1928~1989)の誕生日だからです。

マンガはいまや日本文化の核心のひとつであり、マンガ本は文字の本より遥かに売れていて、佳品も無数、「文化の日」が「マンガの日」に替わってもそう違和感がないと想像するのです。

つぎなる話題。

第4章にあった「日本に女性政治家が少ない原因」項です。

高山氏は、日本女性の社会的地位が世界153カ国のなかで121位だった残念な事実を考察しつつ、「低い理由は『女の政治家の少なさ』という。(pp.148)」、こう紹介しておられます。

しかし日本ではどの政治家もカミさんには頭が上がらない。(pp.148)

女性政治家が少ない問題とはなんら関係がないご指摘です。

そのうえ、

日本女性がなぜ政治家を志さないのか。
それは昨今の政治家が常に偽善と悪意に満ちた野党の罵声に耐えねばならないからだ。(pp.149)

本当かどうか首をかしげたくなる分析をなさいました。

野党側だって女性議員は少数なわけですから、おそらく当該分析は的を射ていないはず。

わたしは「日本の女性たちは立候補したのち選挙で戦う過程に抵抗があり、敬遠しているんじゃないだろうか」と推察しますが、これとて外れているやもしれません。

いずれにせよ女性政治家を増やす取り組みは急務であり、日本国憲法第68条は閣僚に民間人を起用してかまわないと認めているので、関係各位はぜひそちら方面にも目を向けるべきと思います。

個人的には、上川陽子衆議院議員(1953年生まれ)のさらなるご活躍を期待しますし、政府が村木厚子氏(1955年生まれ)や中満泉氏(1963年生まれ)を閣僚に迎え入れてほしいと願ってもいます。

上記のかたがたばかりではなく、国政・地方自治をまかせられる女性が国内にたくさんおられることは論を俟たず、志あるみなさまにどんどん登場していただきたいものです。

金原俊輔

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