最近読んだマンガ27:『たそがれ優作・1』、安倍夜郎 作画、幻冬舎コミックス、2023年
わたしは安倍氏(1963年生まれ)の、
安倍夜郎 作画『深夜食堂』シリーズ、小学館(2007年~ )
が好きなため、同氏による本書『たそがれ優作』も迷わず求めました。
主人公・北見優作は、
ドラマや映画で
よく見かける顔だが、
さて、名前は……
優作は
そんな役者である(pp.18)
こうした設定の人物で、年齢は、第15章「年の差ワイン」のセリフをもとに推測すれば、52歳です。
彼がいろいろな土地へ行き、いろいろなお店に入って、ひとりで、またはいろいろな人たちと共に、いろいろなお酒・料理を飲食する……、『たそがれ優作』はそういうマンガ。
わたしは、優作の地味な顔立ちに親近感をおぼえましたし、彼の温和な人となりに好感を抱きました。
いまのところ、彼が「たそがれ」ている描写はないので、気をもむ必要とてありません。
本書を開くや安倍氏が繰り広げてくださる円(まろ)やかな世界にゆっくり浸ることができます。
読書中、「人生、飲食する時間を大事にしないといけない……」、わたしはこう思いました。
ひとつ難を付ければ、安倍氏の作品には大人読者の心に染みる人情味たっぷりのエピソードが多く、そこが氏の売りになっているものの、『深夜食堂』は1話が10ページであるのに対し『たそがれ優作』は1話わずか4ページ、こんなに少ないページ数であるせいで、さすがの作者もお力を存分に発揮できていないご様子です。
説明不足と感じられる箇所が散見され、各地・各店での知人や関係者との邂逅も頻出しすぎました。
さて、優作には離婚歴があり、現在ひとり暮らしなのであちこちで外食をしているのですが、第29章「海苔弁の春」においては、自分でつくった海苔弁当を食べつつ花見を楽しんでいたとき、偶然の導きで旧知の女性ジャーナリスト長谷川さんと出会いました。
「結構、美人(pp.112)」な長谷川さんが、
ご一緒していいですか?(pp.134)
優作は「もちろん!(pp.134)」と応じ、
春、なんだか
恋の始まりそうな予感……(pp.134)
めでたい先行きが予想されます。
ただし、実は優作、酒亭「しの」の女将ともかなり近しいご関係みたいですから、何かひと悶着が起こってしまうかもしれません。
その悶着、全4ページに収まるのでしょうか?
金原俊輔