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『平成の通信簿:106のデータでみる30年』、吉野太喜著、文春新書、2019年。

平成時代の約30年間、わが国が示した発展・停滞はどうであったか、を総覧した本です。

日本だけが対象なのではなく、テーマに応じて海外の動向も紹介されました。

平成の世界および日本をひととおり把握するうえで格好の手引となる内容であり、興味をそそられる話題が目白押しでした。

たとえば、日本人の米消費量。

2016年は54キロと、ピーク時の半分以下となった。(中略)
年に54キロといわれてもピンとこないので、ごはんにするとどのくらいか考えてみよう。(中略)
お茶碗で年に830杯、牛丼並盛なら480杯分のごはんを食べていることになる。この数字、筆者の感想としては、計算結果を思わず二度見したほど多い。1日にごはんを食べる回数は「2回」が最も多いというデータもある。なんだかんだで日本人はごはんをよく食べているようだ。(pp.103)

54キロという数値にレストランやファーストフード店やコンビニなどで売れのこり廃棄されてしまったお米が含まれていないことを祈念いたします。

つぎに、日本人の身長は、

全95カ国中、男性は57位、女性は70位。中央値よりほんの少し低いが、ほぼ真ん中というところで、日本より高い国も低い国もたくさんある。(pp.218)

らしいです。

平素「われわれは欧米人よりどれくらい背が低いのか」程度の疑問しか頭に浮かばず、「世界全体で見ると普通(pp.219)」というのは知らなかった情報でした。

以上の2例は、まあ冷静に受けとめることができるデータでしょう。

いっぽう、『平成の通信簿』においては、不安を抱懐せざるを得ない記述も少なくありません。

1989年、世界の上場企業の「株式時価総額ランキング」では、最上位30社のうち日本企業が21社を占めていたそうですが、

2018年5月末では、日本企業は30位以内から全て姿を消した。日本企業で最も上位にあるのはトヨタ自動車(32位)となっている。(pp.16)

の由。

さらに、世界と比較した「1人あたりGDP(国内総生産)」の順位は、

2000年の第2位をピークに低下をつづけ、2017年のランキングでは日本は25位となった。(中略)
かつて首位を争った欧州のトップグループからは引き離され、イギリス・フランス・ドイツなど欧州の1軍グループからやや後れをとりつつある。そして、イタリア・スペインなど欧州の2軍グループや、韓国・台湾が後ろに迫っている。(pp.24)

国力の衰えを感じます。

著者(1977年生まれ)の執筆目的は、統計的な事実をならべて読者に平成時代を再認識させることであり、衰退傾向に対しなんらかの解決策を提案することではないようです。

したがって本書を閉じたのち、読書により生じた不安感は解消されないままでした。

ただ、「はじめに」で、

本書で伝えたいことは、この30年で世界はとても良くなったということである。(中略)
もちろん日本も例外ではない。世界における日本の相対的な位置が下がったことよりも、それ以上のペースで世界全体が良くなったことのほうが、ずっと大きい。(pp.5)

こうお書きになっています。

心配しすぎる必要はない、過度に悲観する必要もない、というお考えなのでしょう。

金原俊輔

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