最近読んだ本357
『疫病2020』、門田隆将著、産経新聞出版、2020年。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、日本はこれまでどんな対応をしてきたか。
安倍首相は?
自由民主党・公明党そして野党は?
厚生労働省は?
まだコロナ禍が収束したわけではないものの、現時点で猛省すべき点を猛省し今後のために役立てる……、門田氏(1958年生まれ)はそういうお気もちで上掲書を執筆なさったようです。
ご自身が折に触れて発信したツイッター文も交えた構成となっていました。
きびしい言葉がならびます。
日本では国民の命を守らなければならないはずの政府に危機感は薄かった。相変わらず中国全土からの入国を止めることができず、しかも、国会でそのことは問題にもならなかった。
日本の国権の最高機関では、延々と「桜を見る会」のことだけが取り上げられていた。(pp.140)
国民の命というのは、厚労省の官僚たちにとっては「眼中にない」という表現のほうが正しいかもしれない。武漢のありさまを見て、「これは日本が危ない。中国からの入国禁止を」と叫ぶ官僚が皆無だったことは、さもありなんなのである。(pp.38)
危機意識の欠如を露呈した安倍政権のもとを辿れば、どうしても感染症を所管する厚労省の認識の甘さに行きつく。厚労省の姿勢が、そのまま官邸の致命的な失敗へとつながったのである。(pp.45)
私はこの時点で、安倍政権の対策が「原発事故時の民主党政権と同じだ」と感じていた。危機の本質と真実を掴むことができず、ただ右往左往する姿である。(pp.21)
中国全土からの入国禁止を断行して下さい。さもなければあなた達は日本国民の敵、歴史の罪人となる ― これ以上の言葉、これ以上のお願いはほかに存在しないだろう。「首相、早く目を覚ませ」とは、もはや悲痛な叫びというほかない。(中略)
安倍官邸はまったく動く気配を見せなかった。私は「国民の命を守れない政権に明日がある筈がない」と発信した。(pp.203)
新聞や書籍を通し、わたしは『疫病2020』に書かれている動きをすこしは把握しており、他の多数の国民とおなじく政府に批判の目を向けていました。
けれども厚生労働省の姿勢までは知悉(ちしつ)していませんでした。
記述内容が事実であるとしたら、あまりに残念です。
書中、ただひとつ明るい話題は、日本人の「底力(pp.349)」。
2020年4月7日、安倍首相が「緊急事態宣言」を発令した際、
この宣言以降、日本人は世界を驚かせる行動を見せた。強制力がない宣言だったにもかかわらず、日本の経済活動は見事に「止まった」のである。
交通機関や宿泊施設、飲食店、映画館、劇場……あらゆるものが、営業を自粛してこの方針に従ったのだ。
「うつらない」「うつさない」という大目的のために政府が打ち出した「三密」を避けよ、という要請に対して、国民が一致して協力したのである。(pp.250)
感動をおぼえる箇所でした。
また、
それでも国民は、立ち向かった。
なかでも医療現場の踏ん張りは素晴らしかった。それは「笑顔」という点である。(中略)
患者がやっと辿り着いた医療現場には、いつもと変わらぬそんな看護師たちの「笑顔」が待っていた。
医師も含めて医療従事者たちの姿は、まさに「日本人、ここにあり」を示すものだった。(pp.252)
頭が下がります。
著者の結論は「勝利したのは、『政府』ではなく、やはり『国民』だったのだ(pp.349)」でした。
わたしは同意します。
「勝利」の語ですが、2020年8月現在、わが国においてコロナ感染者数が急増中ながら死者数のほうはそれほど増えていないので、いまのところ諸外国にくらべ勝利していると見てよいでしょう。
本書では中国と台湾の状況もくわしく語られていました。
金原俊輔