最近読んだ本368

『ふたりの怪物:二階俊博と菅義偉』、大下英治著、エムディエヌコーポレーション、2019年。

自由民主党に所属する二階俊博氏(1939年生まれ)および菅義偉氏(1948年生まれ)、ふたりの衆議院議員の活動を追った政界ドキュメントです。

わたしは昨年の夏、上掲書を読みました。

が、批判精神が乏しい内容に心底落胆し、書評をする気など起こらず、この「最近読んだ本」コラムではあつかいませんでした。

それから1年が過ぎ……。

2020年9月、菅氏は党総裁に選出され、つづいて第99代内閣総理大臣に就任なさいました。

大きな動きです。

こうした動きを受け、過日、わたしは何となく『ふたりの怪物』のページをパラパラめくって読み直していたところ、当時おもしろくなかったけれども現在は相当おもしろく感じられる文章に出くわしました。

紹介しましょう。

2012年(平成24年)に、自民党・河井克行(1963年生まれ)副幹事長は選挙区である広島県の会合へ菅氏を招き、講演をしてもらったそうです。

講演のあと、河井の妻の案里が言った。
「菅さんはただ者じゃない。あの人は、これから絶対に日本の政治の中枢を担う人になる。だからあなた、よくよくそれを頭に入れて、しっかりとお付き合いさせてもらいなさいよ」(pp.218)

まさしく「先見の明」と驚かされます。

言葉どおり、菅氏は日本の政治を担うリーダーになられたわけですので。

かてて加えて、上記発言をなさった河井案里氏(1973年生まれ)と夫の克行氏は「公職選挙法」違反で逮捕されました。

いま、ご夫婦そろって東京拘置所におられます。

たいへん皮肉な状況で、わたしは政治家たちがあじわう栄枯盛衰の極みを見た思いになりました。

短いものの、以上が感想です。

なお、冒頭にて本書を「批判精神が乏しい」と低評価した件ですが、唯一、

民主党外交の失政に次ぐ失政によって、竹島、尖閣諸島、北方領土と日本の領土主権が侵害される事態が止まらなかった。国家観に欠け、責任感も気概もない民主党政権では、国益が損なわれるばかりの状況に(後略)。(pp.208)

こんな批判が述べられていました。

わたしは当該批判に強く同意いたします。

金原俊輔

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