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『反日 vs. 反韓:対立激化の深層』、黒田勝弘著、角川新書、2020年。

わたしは標記書を読み、つづいて、おなじく大韓民国の現況を紹介した、

シンシアリー著『「反日」異常事態』、扶桑社新書(2020年)

にも目をとおしました。

数年来「日韓関係最悪(黒田書、pp.16)」の声が持続しており、左の表現はかつて本コラム書評で用いましたし、いずれにしても、いっぽうの当事者であるわれわれ日本人は両国関係をきちんと勉強すべき、と考えます。

上掲2冊は勉強になりました。

たとえば、

世界において、韓国のように外交問題をめぐって特定の国の輸入製品に対する不買運動を官民挙げてやる国があるのだろうか。
貿易摩擦から制裁・報復合戦になり、まさに「米中経済戦争」といわれる状況下の中国でさえ、米国製品の不買運動が官民挙げて展開されているという話はない。(中略)
また米国から経済制裁を受けているイランでも、時に反米デモの場面で米国旗を焼き、ひょっとしてコカ・コーラのようなものを足蹴(あしげ)にするようなことはあるのかもしれないが、メディアを動員した官民挙げての反米不買運動など聞いたことがない。(黒田書、pp.63)

これは、韓国での「反日不買運動」の盛りあがりを考察した項に含まれていた文章なのですが、指摘されてみると、たしかに、かの国の国民はそういう特異な傾向を有している模様です。

第2例目。

2020年、韓国がおこなった新型コロナウイルス感染症対策は、同国発表によれば成功裏にすすみました。

対策は「K防疫」と呼ばれ、

K防疫に「酔って」しまった韓国の心理が、韓国の反日感情、及び、米中葛藤(かっとう)においての韓国の外交政策などに、そのまま反映されているからです。(中略)
韓国の反日・外交においてもっとも注目にあたいする要素であると、私は思っています。防疫がそんな分野で核心になるというのも実に妙な話ではありますが。(リー書、pp.96)

そして「『韓国は世界から褒められている』『日本に勝った』などのフレーズに酔いつぶれ(リー書、pp.131)」ている由です。

こうした情報に接した結果、わたしはある程度まで最近の韓国の雰囲気をイメージすることができました。

黒田氏(1941年生まれ)は韓国在住のジャーナリスト、リー氏(1970年代生まれ)は韓国人で日本在住の文筆家。

十分な知識をおもちのお二方による、突っ込みが鋭い時評でした。

勝手な注文をつけますと、どちらの書籍も「日本 対 韓国」の緊張のみに焦点を絞ってしまっています。

2冊のタイトルに忠実な展開ではあるでしょう。

ただ、それぞれの国が第三国と如何なる交流をしているのかということにも目を向ければ、日韓のあいだに横たわる問題の本質が、より明らかになっただろう、と感じられました。

わたしが何を述べようとしているかというと、近年における韓国と周辺諸国のトラブルの件です。

あちこちで揉(も)めごとを起こしています。

まずは、タイ。2014年、「タイ - 韓国」サッカー試合での韓国チームの不正をタイ側が非難、これに韓国人たちは人種差別発言や王室侮辱で応酬し、タイ人を怒らせました。

つぎに、ラオス。2018年、ラオスのダムが決壊、関与していた韓国企業が不適切な対応をおこないました。

インド。2020年、インド東部の州にてガス漏れ事故が生じ、事故を起こした韓国企業の経営者らをインド政府が逮捕。

ベトナム。2020年、ベトナムが新型コロナウイルス感染症予防対策で韓国人旅行者を隔離した処遇に韓国側は不満、不満のあまりベトナム人やベトナムの国民食を嘲笑。

フィリピン。2020年、フィリピン女性の日本「旭日旗」に似たタトゥーにたいし韓国ネット民が激昂、フィリピン全体への誹謗中傷。

ニュージーランド。2020年、在ニュージーランド韓国人外交官によるセクハラ事案発生も韓国政府は謝罪を拒否、ニュージーランド政府が不快感を表明。

古くは、韓国が台湾と断交する際、相手国に敬意を欠いた仕打ちをして、

古谷経衡著『知られざる台湾の「反韓」』、PHP研究所(2014年)

なる本が出版されたほどです(良い読物とは言えなかったものの)。

以上、韓国は揉めすぎでしょう。

昨今の日本はこんなに他国との諍(いさか)いを出来(しゅったい)させてなどいないと思量します。

もしかしたら、韓国において外国とりわけ東アジア・東南アジアは遠慮する必要がない国々に映っているのではないでしょうか。

つまり、見くだしているのでは……?

どの国どの国民も(わが国とて例外ではなく)「夜郎自大」的な要素を所持していると想像されますが、韓国人の場合、当該要素が強固なのかもしれません。

そういう性向が日韓関係に悪影響をおよぼし深刻度を高めている、と思われるのです。

金原俊輔

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