最近読んだ本560:『成長戦略は台湾に学べ:日本人が知らない隣人の実力』、御堂裕実子 著、かんき出版、2023年

著者の御堂氏(1979年生まれ)は「日本と台湾の企業を繋ぐコンサルタント(pp.4)」としてご活躍中のかたです。

台湾の諸事情を熟知されており、上掲書で台湾ビジネスの現況や台湾文化あれこれをくわしく紹介してくださいました。

台湾でのビジネス展開を予定する読者および台湾ファンの読者には有益な一冊。

ビジネスの話題から書評を始めると、台湾では、

1 起業の時点で世界進出を見据えている

2 アメーバ経営が普通である

3 同族企業が多い、友人同士での起業がめずらしくない

4 起業の際、日米欧のブランドと販売代理店契約を結んでスタートする例が多い

5 日本で売れない製品やサービスは、台湾でも売れない

……などの特徴・傾向があるそうです。

台湾の企業と言われても、わたしの場合「台湾積体電路製造(TSMC)(pp.26)」「ジャイアント(GIANT)(pp.70)」「ASUSやエイサー(Acer)(pp.149)」ぐらいしか頭に浮かんできませんが、『成長戦略は台湾に学べ』では各種企業が多領域より選ばれ、論じられました。

どれもが堅実かつ将来有望な会社です。

そして、

かつては日本から学ぶ一方だった台湾側は、今や大きな成長を果たし、世界で指折りの時価総額を誇る半導体メーカーのTSMCを筆頭に、分野によっては日本よりも進んでいます。(pp.93)

一人当たりの購買力平価GDPを見ると、台湾の成長ぶりがさらによくわかり(中略)2021年では、台湾が6万2696米ドル、日本が4万4671米ドルであり、台湾の規模が1.6倍ほど大きくなっています。(pp.25)

著者はこのように台湾の発展ぶりを顕示なさいました。

台湾人の人柄はどうかといえば、

1 縁起をかつぐ

2 義理と人情に厚い

3 慈善の精神がある

4 40歳代から50歳代にかけての女性たちの存在感が大きい

5 食生活に気をつかう

……とのこと。

わたしは縁起をかつぐ生きかたが好きでないものの、それ以外の項目は素晴らしいと思います。

以上が『成長戦略は台湾に~』の概要でした。

ここで、本書を読みつつ抱懐した感想を、3つ書かせていただきます。

まず、わが国の崎陽軒は台湾進出時「熱々のシウマイをその場でお弁当に詰めて(pp.120)」販売した由。

「作り置いたものや冷めたものは貧しい人の食べ物……」
台湾人が心のどこかに抱く感覚に気配りができた崎陽軒は、シウマイ弁当の好調な売れ行きを見事実現することができました。(pp.120)

相手の風習を尊重した同社の戦略に敬意を表します。

ただ、冷めたお弁当を食べるほうが太りにくいという科学的事実を宣伝する手段もあったかもしれませんね(おそらく女性たちに支持されるでしょうし、熱くしないことで経費節約ひいては省エネにもつながったはず)。

つぎに、著者ご自身の件。

日本の企業や地方自治体の台湾でのプロモーション支援(中略)の仕事をするようになりました。(pp.4)

このくだりでわたしに閃(ひらめ)いたのは、カラスミ・サミットです。

台湾の南部にある台南市はカラスミで有名、わが長崎市もまたカラスミで知られています。

そこで、台南と長崎が毎年交互にカラスミ・サミットを開催する、会場にてカラスミを用いた伝統料理・創作料理を供する屋台をだしたりカラスミ調味料の即売会をしたりする、両市の他の名産品やお祭りなどもからませる、そういうのはどうかと……。

最後に、

アフターコロナの(中略)台湾からの旅行先として日本の人気はまったく衰えておらず、今後の希望海外旅行先に関する各種調査では、いずれも日本がダントツで1位です。(pp.211)

日本人が執筆した台湾関係の読物にはいつもこうした親日情報が記載されていて、わたしとしては嬉しくなります。

金原俊輔