最近読んだ本612:『新書100冊:視野を広げる読書』、高橋昌一郎 著、光文社新書、2023年
2019年7月~2023年7月に刊行された約5000冊の新書の中から、私が責任を持って選び抜いた「新書100冊」を紹介する。(pp.3)
比較的最近出版された新書を、膨大な数の中から厳選して紹介する、とても良い目論見の書評集。
高橋氏(1959年生まれ)は対象とする本を「調査し(pp.3)」「熟読して(pp.3)」「類似した内容の新書が並ばないように、考え抜いて(pp.5)」上掲書を執筆なさったそうです。
真摯なご姿勢と感じました。
ところが、この『新書100冊』には、氏ご自身がお書きになった新書5冊が入り込んでいます。
100冊のうち5冊……。
ふつう、そうした行為は「臆面もない」と軽蔑されます。
常識を有する人ならば自粛するでしょうし、おそらく、思いつきすらしないでしょう。
当方が5冊の件に気づいたのは本書購入後に「目次」を読んでいたとき(もし事前に分っていたら買いません)。
わたしにおける高橋氏の評価は、
下降気味だったのですが、下降が加速したできごとでした。
さて、のこりの95冊。
わたし自身がこれまでに読んだことがある本はほとんど含まれていなかったです。
いずれも佳作・力作のようで、高橋氏の簡にして要を得たご説明をとおし、読書欲がそそられました。
氏は、文系の書、理系の書、技術系の書、領域に関わりなく取りあげられ、縦横無尽に感想を述べていらっしゃっていて、どのページも圧倒的です。
なかでも、
池田譲 著『タコの知性:その感覚と思考』、朝日新書(2020年)
が、おもしろそうでした。
改めて本書の100冊の書評をまとめて見ると「壮観」である。読者には、その「多様性」を存分に味わっていただけただろうか。何よりも、本書が読者の「視野を広げる読書」のお役に立つことを心から期待している。(pp.441)
「多様性」という要素はわが読書歴において不十分、「視野を広げる」要素についてもそれを追求しない読書をつづけてしまっている、と反省いたしました。
金原俊輔