最近読んだ本611:『トラブル回避のために知っておきたい ハラスメント言いかえ事典』、山藤祐子 監修、朝日新聞出版、2021年

ある発言はハラスメントと見なされるのかどうか?

監修者(1968年生まれ)は、

・「ハラスメントに該当する言葉(pp.12)」=「アウト(pp.12)」

・「相手を不快にしたり、傷つけたりする要注意な言葉(pp.12)」=「グレーゾーン(pp.12)」

・「ハラスメントやトラブルの生じる心配が少ない言い方(pp.12)」=「セーフ(pp.12)」

このように定義づけなさったのち、懇切丁寧に、ハラスメントにならない言葉づかいを指南してくださいました。

100のシチュエーションをサンプルに紹介しています。(pp.3)

仕事に関係する「シチュエーション」が最多であり、そのほか、家庭・学校・病院などのシチュエーションも含まれています。

では、13ページからの「職場編」を中心にご紹介してゆくと、たとえば「CASE 1」の「部下の仕事の仕上がりに不満があるとき(pp.14)」。

「こんなこともできないの!? 社会人失格だね」はアウトで、つまりハラスメントに該当するそうです。

納得できます。

「ふつうこれくらい誰でもできると思うよ。なんでできないの?」は、フォロー不足であるため、グレーゾーン。

そして「今のやり方ではよくないと思う。あなたに期待しているから、どうすればいいか一緒に考えよう」だったら、セーフとのこと。

なるほど……。

おなじく「CASE 42」の「産休の申請を受けたとき(pp.102)」。

「長く休むより、やめたほうがまわりに迷惑かけないよ」は、むろんアウト。

「あなたの代わりはどうにかなるから。心配しないで」は「ややトゲのある言い方(pp.103)」なので、グレーゾーン。

「後のことは心配しないで。戻ってくる日を待ってるよ」が、セーフです。

管理職者たちが参考にすべき部下との接しかたと感じました。

ただ、どうしても監修者とわたしのあいだに性格のちがいや見解の相違があります。

「CASE 29」の「女性の見た目をほめるとき(pp.74)」が、一例。

「その服、よく似合ってるね!」と述べればセーフなのだそうですが、わたしは個人的には他者の外見について全く言及しないほうが良いのではないか、と思っています。

また、「CASE 36」の「最近太ってきた部下や後輩と雑談するとき(pp.88)」。

「もしかして最近ストレスたまってない? 心配なことがあれば何でも言ってよ」が、セーフの由です。

これも、わたしだったらおそらく何も言わないだろう、と想像します。

以上のように、当方が本書のアドバイス全部に賛同するというわけではないものの、こうした手引きとなる書物は今の世の中に必須で、監修者は大役を引き受けられたと敬服しました。

明るい雰囲気であるうえ、文章も理解しやすかったです。

金原俊輔