『ロケット・ササキ:ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』、大西康之著、新潮社、2016年。

書名を見て「佐々木さんというロケット工学者の話かな」と思いました。
間違いでした。
主人公が議論をしているときの発想の速さから、アメリカ時代の同僚たちに「ロケット・ササキ」と呼ばれるようになった由です。

佐々木氏(1915年生まれ)は、技術者であり経営者でもありました。
電子レンジや電卓の開発に貢献されたかたです。

2017年1月現在、100歳を超えた長寿を保っておられます。

日本のお生まれで台湾育ちです。

川西機械製作所(のちの神戸工業)にお勤めでしたが、早川電機工業(のちのシャープ)に移られました。
シャープでお力を発揮され、同社の隆盛を導きだしました。

とくに、シャープVSカシオの「電卓戦争」においては、勝敗を決する重要な役割を演じられました。

佐々木氏は、技術者・経営者として有能であったことはもちろん、魅力あるお人柄の持ち主でもあり、その詳細が上掲書に描かれています。

アップル社のスティーブ・ジョブズ氏、ソフトバンク社の孫正義氏、サムスン社の李健熙氏、ノーベル賞の江崎玲於奈氏・・・などの錚々たる人々と親交があったとのことで、これだけでも他者を引きつける彼の魅力が想像できます。

人生では能力と人間性のどちらもが大事なのだと改めて気づかされた本でした。

ところで、佐々木氏は、赤ちゃん時代から18年間を台湾で過ごされました。
とうぜん台湾を愛されています。

しかし、氏が人生をかけて発展に尽力されたシャープ社は、2016年、台湾の企業である鴻海精密工業社に買収されました。

この買収劇はマスコミでずいぶん報道されました。

報道に接しながら佐々木氏が複雑なお気持ちであっただろうことを拝察いたします。

金原俊輔