『ぼくは強迫性障害』、筒美遼次郎著、彩図社、2016年。

強迫性障害は、本当はとりたくない行動をどうしてもとってしまう、本当は考えたくない事柄をどうしても考えてしまう、といった症状をしめす心の病気です。

極端にめずらしいものではなく、人口のおおむね2パーセント(50人に1人)がこの病気にかかっているといわれています。

近年の研究によれば、発症には本人の体質が関与しているらしいです。

わたしも強迫性障害を有しており、幼かった時代からずっと苦しんできたので、興味をもって上掲書を手にしました。

具体例が多く、良い読書になりました。
語り口が明るいため読んでいて明るい気持ちにもなってきます。

著者は30歳のときに強迫性障害を経験され、種々の治療を受けられ、結局、おもに心理療法の効果で快癒された、そのような経緯が詳述されています。

「森田療法の『自覚と悟りへの道』が参考になった」とお書きになられており、わたし自身最もつらかった際に『自覚と悟りへの道』を握りしめて耐えた体験があるので、とても共感しました。
わたしはこの森田療法によって病気を乗り越えることができました。

筒美氏の本では、森田療法ばかりではなく、現在カウンセラーであるわたしが専門としている行動療法や認知行動療法も高く評価してくださっていることがありがたかったです。

さて、著者はもともと学校教師でいらっしゃいました。

強迫性障害の悪化にともなって退職され、他のお仕事につかれたのですが、病気克服後、また教師として再出発されています。

おめでたいかぎりながら、ひとつ疑問が生じました。

病気の症状が本格的に現れてくるのは、30代以降の高校の教員をしていた頃です。と言っても、それが病気だとは思っていなくて、「困った性格だな」「どうしようもないのかな」と思っていました。(pp.40)

教師になるために必要な「教職課程」の授業では児童生徒の心の病気および障害も教えられ、とうぜんそのなかに強迫性障害も含まれています。
ですから、著者がまったく病気をご存じでなかった点を、不思議に感じました。

わたしは、勤務先の長崎ウエスレヤン大学で、心理学だけではなく教職課程の授業も担当しています。

授業において強迫性障害をきっちり教えこんでいます。

わたしの学生たちは内容豊かな授業を受けることができ、より知識が増えて幸せだな、と思わざるを得ませんでした(「やっぱりおいしい手前味噌」というやつです)。

金原俊輔