『ウソつきの国』、勢古浩爾著、ミシマ社、2017年。

勢古氏(1947年生まれ)が上梓されてきた諸作は、高度な内容なのに分りやすく、しかも情感に訴えてくる部分を併せもっていて、わたしは好きです。

最近の作品をあげると『定年後に読みたい文庫100冊』、草思社文庫(2015年)

同書は、想定されている読者年齢層内に自分自身が入っていることもあり、つくづく「読んで良かった」と思えるエッセイでした。

この中では池波正太郎作『真田太平記』がとりわけ熱く論じられ、ずいぶんおもしろそうでしたので、わたしは将来かならず目を通します。

さて、遅くなりましたが『ウソつきの国』の説明に入ります。

これは昨今の日本社会に散見される欺瞞・おためごかし・姑息な言動を、ひとつひとつ取りあげ糾弾した本で、書評も含まれていました。

著者のブレない定見が開陳されています。

たとえば、「応援よろしくお願いします」という言葉づかい。
この言葉づかいにたいして勢古氏は、

スポーツ選手や芸能人の専用言葉である。(中略)これをインタビューの「シメ」の言葉としてだれもが便利に使っている。むろん、たいした意味はない。かれらもなにをしゃべっていいかわからず、手っ取り早く終わりたいから使っているのだろうが、いかにも頭が悪いという気がする。贔屓(ひいき)の選手が使っているとがっかりする。(pp.29)

以上のご指摘をなさいました。

あるいは、両手で他者の片手を包み込む握手のしかた。
著者はそんな握手を「気もちが悪い」「見苦しい」「卑屈」と、かなり強い口調で批判します。

欧米人の大物俳優や映画監督やスポーツ選手に会うときは、それ以上にひどい。インタビュアーは、まるで宗主国の人間に植民地の人間が謁見するような、感謝感激雨あられ的な両手握手をするのだ。(中略)見ていてはなはだみっともない。もし敬意を示したければ、言葉で「お会いできてうれしいです(光栄です)」といえばいいだけの話だ。(pp.138)

よほど腹に据えかねていらっしゃるのでしょう。
微苦笑を誘われました。

上記ふたつ、わたしは比較的たわいない問題に関する勢古氏のご意見を選んで引用しましたが、『ウソつきの国』においては容易ならざる問題が多く語られていました。
同氏にとって最もお書きになりたかった事柄と思われますから、放縦な引用はやめておきます。

なお、本書の最後で紹介されたアニメーション映画監督・宮崎駿氏が登場するエピソードは、胸に迫るものでした。

宮崎氏は立派な人物であるのだろうと想像します。

金原俊輔